ロングステイ財団、学会設立でシンポ、「実学的な研究を」
国内外の長期滞在型観光の普及活動をおこなうロングステイ財団はこのほど、「長期滞在型・ロングステイ観光学会」の設立を記念し、総会とシンポジウムを開催した。ロングステイ財団は長期滞在型観光の啓蒙活動や調査研究などを目的として1992年に設立した団体で、15年11月には学術研究の推進などに向けた学会の設立を発表するとともに、会員の募集を開始。シンポジウムの冒頭で挨拶をおこなった、学会長で立教大学名誉教授の岡本伸之氏は「このような機会を設けることができたのは、皆様のご尽力のおかげ」と謝意を示した。
来賓として登壇した観光庁次長の蛯名邦晴氏は、今後の訪日旅行の拡大に向けてはリピーター化の推進が必要との見方を示した上で「地元の人とより深く交流することができる」ロングステイの重要性を強調。「長期滞在中の旅行者がソーシャルメディアなどで情報を発信することにより、より多くの方の日本への理解が深まる」と期待を示した。
続いて、東京工業大学と首都大学東京で特任教授を務める元観光庁長官の本保義明氏が「なぜ今、観光イノベーションが必要なのか」と題した基調講演を実施。減少している国内旅行の観光消費額を、年次有給休暇の取得による長期滞在化で増加させる考えを示した。学会に対しては「実学的な研究」や「英語の論文による海外への発信」などを要請。「実学的な研究」については、新しいアイデアの提案だけに偏らず、具体的な現状を把握して説得力のあるデータを提示することが必要であることを説明した。
シンポジウムでは「わが国のライフスタイルの転換-滞在型旅行の必要性を問う-」をテーマに、地方創生の支援などをおこなう玄の代表取締役の政所利子氏やマレーシア政府観光局マーケティングマネージャーの徳永誠氏などがパネルディスカッションをおこなった。政所氏は、国内の長期滞在型観光のスタイルとして「のんびり過ごしながら一生懸命働くロングステイ」を提案。有給休暇の取得率が低い日本では、「地方に移住し、その地方で働く『ロングワーク』が合理的。地方の活性化にもつながる」と主張した。
徳永氏は、海外からのロングステイ旅行者を受け入れるためには、そのための「人材育成」が必要となることを強調。現在はテロ事件などの影響により、外国人旅行者の受け入れを敬遠している施設が見られるものの「外国人旅行者を受け入れることは日本の経済に必要不可欠」と指摘し、改善に向けては「日本人が海外でロングステイを体験することで、外国人の受入方を学び、日本を見直すことができる」と説明した。