海外回復に向け旅行会社トップが議論-JATA経営フォーラム
業界を挙げて市場開拓や情報発信を
新たなトレンドづくりも
日本旅行業協会(JATA)はこのほど、毎年恒例の「JATA経営フォーラム」を開催した。今回のテーマは「交流大国への挑戦-担い手としての旅行業の役割-」で、会員企業のトップなどによる分科会は、旅行会社、航空会社、宿泊施設、女性の活躍の4つをテーマに実施。そのうち旅行会社に関する「海外旅行の未来展望を語る-旅行会社の役割・存在意義とは-」では、海外旅行回復のカギを握る4社のリーダーが、今後の市場開拓や商品開発、JATAがめざす年間出国者数2000万人の実現などについて議論した。
モデレーター
ミキ・ツーリスト代表取締役社長 檀原徹典氏
パネリスト
エイチ・アイ・エス代表取締役社長 平林朗氏
クラブツーリズム代表取締役社長 小山佳延氏
JTBワールドバケーションズ代表取締役社長 井上聡氏
楽天執行役員トラベル事業長 山本考伸氏
HIS平林氏「今年は出国者数増へ」
シニア旅行の開拓など提案
ディスカッションの冒頭で、現在の海外旅行を取り巻く環境について見解を示したエイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役社長の平林朗氏は、燃油サーチャージの撤廃や円高傾向などにより、今年の出国者数が前年比でプラスに転じると予想。低迷している韓国や中国への需要にも回復の兆しが見られることから「出国者数増の後押しになると思う」と期待を示した。また、同社でも2月に入ってからは海外旅行の取り扱いが前年比増となっていることを伝え、「いい夏になる気配を感じる」と語った。
一方で、ヨーロッパ方面などの回復の大きな阻害要因となっているイスラム教過激派組織ISILの影響については「しばらくはなくならない」と述べ、2月6日から4月3日まで継続する「We Love Parisキャンペーン」での販売状況についても「なかなか厳しい。現在の投資に対するリターンでは継続は難しい」と伝えた。12月にパリを訪れた平林氏は、自身の目で街が平穏な状態に戻っていることを確認した旨を説明。その上で「1社の力で情報を浸透させるのは難しい」と訴え、需要回復に向けた情報発信については、業界全体で力をあわせる必要があるとした。
今後の新たな需要創出に向けては、シニアの海外旅行市場を開拓する新たなムーブメントとして「古希の旅や喜寿の旅、人生の終わりに向けた旅」などを作り出すことを提案。「日本人は『行かないと恥ずかしい』といった雰囲気に弱い。比較的簡単に需要を作り出せるのでは」と語った。そのほかには、急拡大する観光関連予算のほとんどが訪日旅行と国内旅行の振興に振り分けられていることに懸念を示し、「1割くらいは海外旅行にも使ってほしい」と要望した。