JATA、パリ事件後初の事故対応セミナー、参加者大幅増

  • 2016年3月20日

会場の様子。今回は会場の規模を拡大した  日本旅行業協会(JATA)と指定事業委託会社のジャタ、海外での事故に対する支援サービス事業をおこなう日本アイラックは3月18日、都内で「JATA重大事故支援システムセミナー」を開催した。海外旅行中の重大な事故に対する緊急対応などを支援する「JATA重大事故支援システム」や、各種団体保険の紹介などを目的として毎年実施しているもので、今回は昨年11月にパリで発生した同時多発テロ事件を受けて、参加希望者が大幅に増加。全日通霞が関ビルの大会議室に、例年よりも3割程度多い約130人が集まった。

JATA事務局長の越智氏  今回のセミナーのテーマは「パリ同時多発テロ後の国際情勢とISの動向を踏まえ、旅行会社の緊急対応を考える」。冒頭で挨拶したJATA理事・事務局長の越智良典氏は「非常に難しい時代になり、どこでテロが起きるか分からない状況だからこそ、旅行時代の役割が求められている」と述べるとともに「リスクを減らすために自力で何ができるかを考えるのが我々の仕事」と強調した。また、昨年9月に外務省が「海外安全情報」を改定した際に、一般消費者に向けて旅行会社を選択する際には安全対策について確認するよう呼びかけたことに言及し、参加者には「しっかりと危機管理に取り組むことで、旅行者に利用してもらえることもある」と語った。

パネルディスカッションの様子。左から東京海上日動火災保険の中原氏、JATAの矢嶋氏、日本アイラックの山下氏、ジャタの大西氏  セミナーではJATA広報室長の矢嶋敏朗氏、ジャタとの提携により「JATA重大事故支援システム」を運営している日本アイラックの山下寿人氏、東京海上日動火災保険の中原隆氏によるパネルディスカッション「テロ遭遇時の旅行会社の対応~JATA重大事故支援システムと保険の役割について~」を実施。パリでの同時多発テロ事件で、1名の添乗員に率いられた20名の企画旅行の旅行者のうち1名が死亡し、2名が負傷したケースを想定して、旅行会社が取るべき緊急対応について説明した。

 矢嶋氏は広報担当者としての長年の経験から、事故発生後の電話取材や記者会見、家族の渡航などに関してに取るべき対応を説明。今後は「旅の安全の日」である7月1日頃を目途に、昨年9月にJATA広報委員会が作成した「緊急事故対応広報マニュアル」に基づく広報向けセミナーを予定していることも明らかにした。山下氏は、事故発生時には外部に情報が漏洩しないよう、情報管理の窓口を一元化してマスコミ対応に備えることなどをアドバイス。中原氏は旅行会社に対し、旅行者の海外旅行保険への加入を強力に推進することを求め、「そのことがお客様だけでなく、会社を守ることにもつながる」と強調した。

 モデレーターを務めたジャタ社長の大西誠氏は「重大事故との遭遇は旅行会社にとっては大きな試練となる。迅速かつ適切に対応できるような日頃からの備えが極めて重要」と改めて説明。出席者へは「JATA重大事故支援システム」への入会や「旅行事故対策費用保険」「旅行業者賠償責任保険」など各種保険への加入を推奨した。

国際政治アナリストの菅原氏  この日はそのほか、国際政治アナリストで危機管理コンサルタントの菅原出氏が講演をおこない、イスラム教過激派組織ISILを巡る国際情勢や、拡散するテロの脅威について解説した。同氏は先進国からISILに参加して、その後に帰国した「帰還兵」がテロ事件を起こす懸念などについて説明したものの、旅行者がテロ事件に遭遇する可能性は「その他の事故などに比べて非常に小さい。過剰に怖がる必要はない」と明言。その上で旅行会社に向けては「リスクへの対応がしっかりしていることは信頼感につながる」と述べ、リスクマネジメントの強化を呼びかけた。