パリ市長など来日、旅行者数回復に向けJATAと意見交換会
日本旅行業協会(JATA)とフランス観光開発機構はこのほど、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏とイル・ド・フランス地方圏議会議長のヴァレリー・ペクレス氏の来日にあわせて、日本の旅行業界関係者との意見交換会を開催した。フランス側の意向により実現したもので、イダルゴ氏は昨年の11月に発生した同時多発テロ事件後の安全対策について「観光地には警察官に加えて5600人の軍人を配備し、監視システムも強化している」と説明。あわせて「私たちは確かにテロ事件によって傷ついたが、街には日常生活が戻ってきている。日本人にも戻ってきて欲しい」とアピールした。
ペクレス氏は、5月26日までの延長が決定したフランス全土への非常事態宣言が、危険な状態が継続していることを示すものではないことを説明し、「安全管理のレベルが高まっていることと理解して欲しい」と訴えた。また、「日本人は洗練された旅行者なので、私たちも洗練されたもてなしをしなければならない」と述べ、観光業界における人材育成のほか、フランス語や英語で提供している案内表示や観光情報アプリ「Welcome to Paris」について、日本語にも対応する考えを示した。そのほかにも、日本を含む各国の生活様式に対応するホテルや、B&Bタイプの宿泊施設の開業、シャルル・ド・ゴール空港とパリ市内を繋ぐ高速列車の開発なども検討していることを説明した。
日本側からはJATA副会長の菊間潤吾氏が、1月に実施したパリ視察で街の安全を確認したことを強調。「自信をもって観光客を送り出したい」と述べた一方で、日本の旅行会社からだけでなく、フランス側からも実情についてアピールすることの重要性を訴えた。同様にKNT-CTホールディングス執行役員の池畑孝治氏や、日本航空(JL)取締役専務執行役員旅客販売総括本部長の藤田直志氏も「正確な情報を日本のメディアを通じて、恒常的に発信する必要がある」と主張した。
ミキ・ツーリスト取締役執行役員の今野淳子氏は、「日本人は危険に対して敏感だが、一方で、旅先からの暖かな歓迎の気持ちに反応しやすい」と発言。パリ市長直轄の観光担当職員と同社のスタッフによる専門部署を市役所内に設置し、日本人への情報発信を強化することを提案した。JTBワールドバケーションズ代表取締役社長の井上聡氏は、パリへの旅行者を対象に実施したアンケートの結果を報告。「地下鉄の雰囲気が暗い」などの意見が多かったとして、さらなる利便性の向上のため、照明やエスカレーターの増設、日本語表記の案内板の設置などの改善策を提案した。
パリへの日本人旅行者数の回復に向けた改善策に関する提案が多く挙がるなか、エイチ・アイ・エス(HIS)執行役員海外営業本部本部長の波多野英夫氏は、2月6日から開始した「We Love Parisキャンペーン」の効果を報告。同氏によると、キャンペーン実施前の1月は前年の30%程度まで落ち込んでいたフランス旅行商品の売上高が、2月には70%にまで回復したほか、キャンペーンにあわせた特別ツアーの集客も好調で、今後は第2弾の発売も計画しているという。そのほかには3月下旬から4月にかけて、フランス観光開発機構やエールフランス航空(AF)とタイアップした広告を展開し、新商品も発売する予定を説明した。
JATA会長の田川博己氏は、2001年のニューヨークでの同時多発テロ発生後には、ニューヨーク好きの旅行者の協力を得て最新の現地情報を発信し、一般消費者へのプロモーションを拡大したことを紹介し、今回も同様の手法で旅行者数増の回復に努めることを提案した。また、JATAとしては各社の旅行商品の造成に歩調をあわせて、販売を支援していく考えを示し、フランス側に対しては「焦らずに着実に取り組みを進めて欲しい」と求めた。
日本側の意見を受けて、イダルゴ氏は「今回の提案を復活への出発点とし、詳しく検討した上で行動を起こしたい」と述べた。ペクレス氏は井上氏の地下鉄の設備に関する改善案について「パリ交通公団に伝える」と語り、あわせて日本人向けの旅行商品として造成を計画しているというクロード・モネなど印象派画家のゆかりの地を巡るツアー商品について、「田川氏など著名な方々にぜひ試していただきたい」と呼びかけた。ツアーの詳細については、5月または6月頃にフランス観光開発機構が開催を予定するワークショップ「サキドリ・フランス」で紹介するという。