日本商工会議所、観光振興に向け提言、「国内旅行に数値目標を」
「国民総参加」で展開拡大
到達可能な目標で「達成感」を
▽訪日は受入体制強化、国内は休暇取得推進など
日商は今後の日本の観光振興について、訪日旅行と国内旅行を車の両輪として位置づける考え。訪日旅行については、急増する外国人旅行者数と消費額が今後も増加するとの見方を示した上で、「受入体制の強化が不可欠」とし、東京・大阪・京都など特定の都市や地域に集中する旅行者を各地に分散することが重要と指摘した。具体的な施策としては、インターネットを中心にさまざまな媒体を活用して着地型情報の発信を強化するとともに、地方の空港や港湾の活用促進に向け、着陸料の軽減やCIQの迅速化などへの支援の拡充を求めた。
また、国際情勢などに影響されることがないよう、多様な訪日外国人旅行者の受入拡大に努めるとともに、安定的な確保が必要と強調。現在の訪日外国人旅行者の7割超を占める東アジア諸国のみに頼ることなく、特に欧米などからの旅行者の受け入れに努めるべきとした。そのほか、主要な交通インフラと優れた観光資源を有し、二次交通が整備された「交流拠点都市」の構築、受入体制の強化に向けた民間・政府・自治体の役割の明確化なども求めた。
国内旅行については、日本人旅行者数と消費額が、長期的には減少傾向にあるとの認識を示した上で、「観光の機運醸成と観光産業のイノベーションなどにより、減少に歯止めをかけることが重要」と説明。安定的な雇用や季節的・時期的な需要の差の平準化に向けた対応、国を挙げての休暇取得キャンペーンの実施など、官民一体での取り組みが必要と指摘した。
また、泊食分離や電子決済の推進、IoT(モノのインターネット。家電などIT関連機器以外のモノをインターネットに接続する技術)への対応など、旅行者のニーズに対応する形での、観光産業側の商習慣の改善や経営革新が必要と強調。そのほか、政府による観光関連データの一元的な整備と提供や、訪日旅行と同様に「交流拠点都市」や観光圏の構築、受入体制の強化に向けた官民の役割の明確化なども求めた。
各種の規制緩和や法制度の整備については、史跡や古民家などの宿泊・飲食施設などへの活用促進、地域限定旅行業の参入を促す旅行業法の登録制度の弾力化、ランドオペレーターの有効活用に向けた登録制度の導入、バス・タクシー事業者の再生と新規参入のルールづくり、宿泊施設の整備に向けた旅館業法などの見直し、民泊に関する法制度の整備などを要望。構築が急がれる日本版DMOなどによるマーケティングの推進や、農業やスポーツなどを軸にした新たな形の観光の促進にも期待し、関係省庁の連携強化などを求めた。