現地レポート:フランス復活に向け現地視察、地方への誘客も
パリの治安維持体制を確認
業界全体で送客増へ
帰国後に視察団が報告会を実施
ツーリズムEXPOには要人の招聘を予定
JATAでは今回の視察を経て、フランス旅行需要の回復に向けたプロモーションを実施していく予定。また、旅行業界内でもフランス側と協力して、訪仏日本人旅行者数の回復をめざす動きが出始めている。
2月17日にはJATAが 駐日フランス大使館公邸で、旅行会社を対象にしたセミナーを開催。約100名の参加者に対して視察旅行の報告をおこなうとともに、今後のプロモーション施策について説明した。
菊間氏は視察内容を振り返った上で、「安心・安全を消費者に伝えるためにも、積極的にツアーを造成することが重要では」とコメント。また、視察団に参加したミキ・ツーリスト取締役執行役員の今野淳子氏も「旅行者には『そろそろフランスに行きたい』という人が増えている」と話し、業界全体でフランス旅行を盛り上げていく必要性があることを説いた。
今後は3月末までを目途に、旅行業界の有志からなる「パリ観光会」がパリをピーアールする映像を制作。3月から4月にかけては、フランス観光開発機構が主体となり、日本国内の駅でフランスのポスター広告などを展開するほか、3月18日にはフランス大使館で各旅行会社がVIPと位置づける顧客を招いてセミナーを開催する。5月と6月には、日仏間の相互交流をテーマにしたワークショップも予定。 一方、JATAは9月のツーリズムEXPOジャパンで「大フランス展」を実施する予定で、フランス観光開発機構のマンテイ氏など、現地のキーパーソンに来日を呼びかけている。
「美しい村」サン・シル・ラポピーとリクヴィル
村をフックに日本人を地方に送客
今回の視察では、JATAがこのほど「ヨーロッパの美しい村30選」に認定した2つの村を訪問し、認定証を贈呈した。まず訪れたのは、ミディ・ピレネー地方のサン・シル・ラポピー。ロット渓谷の断崖絶壁の上にある、13世紀から14世紀頃の建物が残る中世の雰囲気を残した村で、20世紀には詩人で作家のアンドレ・ブルトンをはじめ、多くの芸術家たちが居を構えた。現在も芸術家たちがアトリエを持っている。
菊間氏は現地で開催した村長などとのミーティングで、「日本における認知度を高めたい」と語り、日本/トゥールーズ間のチャーター便を利用して、同村を含むミディ・ピレネー地方を訪れる旅行商品の開発を検討する考えを示した。村長のジェラール・ミケル氏は、村の史跡や景観の保護に注力するとともに、観光客の受入体制の整備に取り組んでいる点を強調。ミディ・ピレネー地方観光局総裁のフィリップ・ゲラン氏は、年間4万5000人の日本人が同地方を訪問していることを伝えるとともに、「画家のロートレックが描いた美しい景観を、日本人にももっと知っていただきたい」とアピールした。
もう1つの村は、アルザス地方のワイン街道の途上にある、人口約1000人のリクヴィルだ。アルザス地方はドイツ帝国領となっていた時代が長く、リクヴィルも1680年にフランス王国に組み込まれるまではドイツ帝国領だった。このため、15世紀から18世紀にかけての「コロンバージュ」と呼ばれるドイツ風の木組みの家が多く残っている。
同地で開催された記者会見では、菊間氏がリクヴィルをフックにアルザス地方に日本人を送客したい考えを表明。リクヴィル市長 のダニエル・クラック氏は「日本の旅行会社のために、アルザスの文化やワインなど、さまざまなサービスを提供していきたい」と意気込みを示した。このほか、アルザス地方観光局総裁のマリー=レーヌ・フィッシャー氏は昨年11月にANA総合研究所とアルザス・欧州日本学研究所が交流促進に向けた覚書を締結したことについて言及。9月4日に予定するウォーキングイベント「アルザスふれあいウォーク」への期待を示した。同イベントには日本から200名が参加する予定だという。
取材:本誌 栗本奈央子