現地レポート:フランス復活に向け現地視察、地方への誘客も
パリの治安維持体制を確認
業界全体で送客増へ
パリ警視庁で治安維持への取り組みを確認
非常事態宣言は「脅威の指標ではない」
フランスへの送客の際に懸念材料の1つとなるのが、同国の治安維持に対する取り組みだ。記者会見では、パリ・イル・ド・フランス地方圏議会議長のダヴィッド・ドゥイエ氏が「フランス当局は住民と旅行者の安全と安心を守るため、治安対策を強化して最大限の取り組みをおこなっている」と強調。菊間氏も、同日に実施したパリ警視庁の視察について言及し、「世界一の観光大国として外国人観光客を守るために最大限の努力をしていると感じた」とコメント。引き続きテロ対策の徹底と、安心・安全の確保を要望した。
パリ警視庁によれば、テロ対策としてパリと周辺地域に6500人の軍人を配備し、観光地の警備を強化。特にエッフェル塔やノートルダム寺院、シャンゼリゼ通り、百貨店を重点警戒地域として位置づけている。また、パリ市内にある監視カメラの1300台の活用にも注力。警視総監官房長のパトリス・ラトロン氏は訪問団とのミーティングで、「フランスが最もテロの被害を受けていることは事実だが、対策は他国に例を見ないほど力を入れている」と訴えた。
ラトロン氏は加えて、フランス全土に発令中の非常事態宣言が「リスクや脅威の指標ではなく、フランス当局や警察がテロ対策に対する特別な手段を可能にするためのもの」であることを強調。宣言は知事に捜査権を与え、家宅捜索や自宅軟禁、電話の盗聴などを可能にするものである旨を説明した。これに対し、視察団に参加した旅行会社からは「日本人は戒厳令のように捉えているが、実際は違っていることがわかった」「旅行者にしっかりと説明し、理解してもらう必要がある」との声が挙がった。なお、宣言は2月中旬に5月26日までの延長が決定した。
このほか、同庁ではテロ事件の発生以前からアジア人観光客に向けた安全対策を強化しているところ。エッフェル塔、ノートルダム大聖堂、シャンゼリゼ通り、オペラ座周辺、モンマルトル、ルーブル博物館の7ヶ所を警戒地域に指定して、軍隊やパリ市警察などの人員を派遣し、パトロールの回数も2年前の1日2日から、現在は1日15回にまで増やしている。また、スリなど軽犯罪の防止に向けて日本語パンフレットを作成するとともに、事例をまとめた著作権フリーのビデオも制作。こうした取り組みにより、15年の日本人の軽犯罪被害者数は、前年比22.8%減の1911人に減少したという。
航空会社やホテルなどから続々と期待の声
意見交換会では、日本政府観光局(JNTO)とJATAの取り組みに対し、現地の航空会社や宿泊施設などから期待の声が挙がった。エールフランス航空・KLMオランダ航空(AF/KL)は、4月に開催する旅行見本市「ランデヴー・アン・フランス(RDVEF)」で、日本の旅行会社向けの招待枠を拡大する方針を表明した。
また、同日にAF/KLの本社で開催したミーティングでは、同社CEOのアレクサンドル・ド・ジュニアック氏が「我々は空港や機体の安全確保に注力し、万全の体制でお客様の送迎に臨んでいる」と強調。エクゼクティブ・ヴァイス・プレジデントのパトリック・アレクサンドル氏は、「AFは日本と長く強固な関係を構築し、いち早く最新のプロダクトやサービスを投入してきた」と述べるとともに、「我々の力だけでは旅行者数を回復することはできない。旅行会社など皆様の力をお借りして、リカバリーに向けて努力していきたい」と話した。
このほか、意見交換会では視察団の受け入れを担当したアコーホテルズが、昨年末からフランスへの誘客を強化するためのキャンペーンを実施していることを説明。 レイルヨーロッパや百貨店のギャラリー・ラファイエットなども、警備を強化して安全の確保に努めている旨を主張し、日本人旅行者数の早期回復を願っていることを伝えた。