ANAHD、3Q営利は3割増で過去最高-通期予想を上方修正
ANAホールディングス(ANAHD)の2016年3月期第3四半期連結業績(2015年4月1日~12月31日)で、売上高は国際線旅客事業が好調に推移したことなどで前年比5.5%増の1兆3690億3100万円となり、過去最高を記録した。営業利益は30.8%増の1167億6000万円、経常利益は50.5%増の1121億9300万円で、ともに過去最高を記録。当期純利益は40.0%増の733億3000万円だった。営業費用は事業拡大に伴う費用増の一方で燃油費が減少し、コスト削減にも努めた結果、3.7%増の約1兆2522億円に抑えた。
航空事業は売上高が5.3%増の1兆1842億円、営業利益が51.6%増の1186億円。事業規模の拡大や、訪日外国人旅行者増などにより好調に推移した。座席供給量を表す有効座席キロ(ASK)は8.7%増、旅客輸送量を表す有償旅客キロ(RPK)は12.7%増、利用率は2.7ポイント増の74.7%。客単価は燃油サーチャージの減少などで2.1%減となった。
このうち国際線は、旅客数が12.9%増の605万4000人、旅客収入が10.5%増の3913億円。ANAHD取締役執行役員の平子裕志氏によれば、昨年11月のパリの同時多発テロ事件の影響で欧州線の需要が減少した。一方、北米路線はビジネス需要が好調に推移。全方面からの訪日需要の積極的な取り組みなどにより、前年から2桁増となった。国際線全線における訪日需要の割合は、前年から7ポイント増加し27%となった。
欧州線については、羽田/パリ線は搭乗率が平均8割だったところ、事件発生後は5割にまで減少。成田/ブリュッセル線は7割から6割に低下した。ただし、ビジネス需要については回復傾向にあるという。今後は欧州発の需要の取り込みを強化していく方針だ。
国内線は旅客数が1.0%減の3256万2000人、旅客収入は1.1%増の5289億円。北陸新幹線の開業による競争環境の変化や、7月の台風による欠航などで旅客数は減少したが、需要動向に応じた運賃設定により収入は増加し、客単価は2.1%増となった。ASKは0.9%減、RPKは0.2%増で、利用率は0.8ポイント増の64.9%だった。
マイレージや整備受託収入、バニラエア(JW)からの収入などで構成する、航空事業におけるその他の収入は、18.8%増の1433億円だった。JWの旅客数は訪日需要の取込強化により57.9%増の129万7000人、利用率は8.8ポイント増の85.7%となった。
航空関連事業は、羽田や関空での空港地上支援業務の受託増などで売上高は1.5%増の1730億円に。一方、パイロットなどの訓練をおこなう子会社の株主取得時に計上したのれんの未償却残高を一括売却したため、営業損益は38億円の赤字(前年:94億円の黒字)となった。
旅行事業は売上高が1.0%減の1293億円、営業利益が4.7%減の42億円。海外旅行では円安やパリでの同時多発テロ事件の影響で「ANAハローツアー」の取り扱いが減少し、売上高は前年を下回った。国内旅行商品は「ANAスカイホリデー」で沖縄や北海道方面を中心に取り扱いが増加し、売上高は前年超えに。訪日旅行の売上高は、台湾や中国本土からの需要を取り込んだことで前年を上回った。このほか、商社事業は売上高が14.2%増の1084億円、営業利益が35.9%増の14.2%増だった。
▽通期業績は上方修正、売上高は据え置き
16年通期の連結業績の見通しについては、売上高以外を上方修正した。売上高は1兆7900億円、営業利益は100億円増の1250億円、経常利益は200億円増の1100億円、当期純利益は130億円増の650億円を予想する。
売上高については、旅行事業の売上高の減少や貨物収入の伸び悩みを予想する一方、国際線旅客収入が堅調に推移すると見通し、1兆7900億円に据え置いた。営業利益は燃油費などのさらなる減少を見込んで上方修正。経常利益は航空機および部品の除却・売却損益などを見込む。