JTB高橋氏、16年の事業に「3本の矢」、仕入れなど強化

  • 2016年1月21日

高橋氏の挨拶の様子  ジェイティービー(JTB)代表取締役社長の高橋広行氏(※高橋氏の高ははしごだか)は1月21日、同社グループの「2016年新春経営講演会」で挨拶し、今後の事業拡大に向けた「3本の矢」として「仕入れ」「訪日旅行」「事業開発」に注力すると語った。2020年までに「アジア市場における圧倒的ナンバーワンのポジション」を確立し、取扱額2兆円と営業利益400億円を達成する長期ビジョンの実現のための重点項目とする。そのほか、4月に設立する新会社の「JTBコミュニケーションデザイン」により、MICE誘致や地方創生などの強化にも取り組む考えを示した。

 特に仕入れについては、近年の訪日旅行の拡大などを見据え、「仕入れを制する者が営業成績を制する」と強調し、同社グループでも引き続き、宿泊施設などの買い取りやチャーター、取引先企業との提携などに積極的に取り組むとした。訪日旅行については、現在の市場動向に鑑み「アジア重視」と明言。中国、韓国、台湾などの極東市場については「さらにウェイトが高まる」との見方を示し、今後の成長が期待できる東南アジア市場からの旅行者も含めて、受入強化と地方分散に取り組む考えを示した。事業開発については「旅行事業にとどまらず『交流文化事業』の範疇で、さまざまパートナーと戦略的な提携を進める」と述べた。

 15年の市場については、訪日旅行が拡大し、国内旅行も堅調に推移した一方で、海外旅行は3年連続で出国者が減少した「まだら模様の1年」と表現。今後についても当面は同様の傾向が続くとの見方を示した。しかし一方では、アベノミクスによる経済効果が、訪日旅行需要や法人需要、地方創生の面で現れ始めていると説明。「昨年の講演では東京オリンピックが開催される20年までを『黄金の期間』と呼ん.だが、実質的に輝きを増している」と評価し、「千載一遇のチャンス」として事業拡大に取り組む意欲を見せた。

高橋氏 今年も海外・国内・訪日の「三位一体」による取り組みを進めるなか、海外旅行については「復活の年にする」と宣言。日韓・日中関係の改善や燃油サーチャージの引き下げ、リオデジャネイロオリンピックなどを追い風に、3年連続の出国者数減に歯止めをかけるとした。「ツーリズムEXPOジャパン」などで業界を挙げて情報提供に取り組み、日本人のなかに「海外に行きたくなる素地」を作ることで、4年ぶりの増加をめざすという。

 具体的にはテロ事件などの影響を受けているヨーロッパを「最重要地域」として注力するほか、関係が改善しつつある韓国や中国などについても「悪い流れを断ち切り、再び成長軌道に乗せたい」と強調した。また、海外のクルーズ船の寄港増により、日本人のクルーズ旅行者が増加する可能性にも言及。「新たなクルーズ元年の到来に期待する」と述べた。

 国内旅行については堅調に推移するとの見方を示し、国内経済が落ち着きを見せ始めたとの見方から「少し高くても、納得のいくものにはお金を使う傾向が続く」と見通した。北海道新幹線の開業や、東京ディズニーシーとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの開業15周年記念企画、NHKの大河ドラマ「真田丸」の放映などが「大きな起爆剤になる」とし、「各コンテンツを最大限に活用して商品造成をおこない、販売強化につなげて市場を掘り起こす」という。

 訪日旅行については「3本の矢」の1本として掲げた一方で、「市場の成長に旅行業界が追いついていない」と指摘した。今後の訪日外国人旅行者の受入体制については「官民を上げた受入体制の充実が望まれる」と要望。16年度の観光関連予算が大幅増となったことについては「大きな成果につながるよう、民間も最大限に努力する」と約束した。今年は他業種との協働も拡大するほか、「東北絆キャンペーン」などの全社キャンペーンも活かして、受入体制と地方送客強化に取り組む。