観光立国推進協議会が新たな提言、「訪日新時代」に向け39項目

  • 2016年1月20日

提言書の手交後に握手する山口氏(左)と蝦名氏 日本観光振興協会(日観振)など107の観光関連団体・企業などからなる「観光立国推進協議会」は1月19日、第3回の会合を開催し「観光立国実現に向けた提言」を取りまとめた。同協議会が昨年8月に協議会の加盟企業・団体を対象に実施した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」に関するアンケートの結果などを受けて作成したもので、国際競争力のある観光立国政策および戦略の推進を求める。提言は会議の終了時に同協議会の委員長を務める日観振会長の山口範雄氏が、観光庁長官の代理を務めた次長の蝦名邦晴氏に手交した。

会合終了後の交流会で挨拶する山口氏  山口氏は会合の冒頭で、2015年の年間訪日外国人旅行者数が1973万人にまで増加し、訪日外国人旅行者による消費額が3兆円を超えたことについて述べ、「すそ野の広い観光産業が果たす役割の大きさが数字になって現れた。観光の重要性が国民にも広く認識されたのでは」と強調。喫緊の課題となっている受入環境の整備などについては「観光立国の実現に向けて、本日提出する提言が少しでもお役にたてば」と期待を示した。

 来賓として挨拶した観光庁長官の田村明比古氏は、観光立国実現のために必要な要素として「国内外の目線から見た観光資源の魅力の再発見と磨き上げ」「観光の基幹産業化」「観光関連産業の国際競争力の向上」「受入環境の整備」を列挙。あわせて「我が国にとって重要なテーマは『地方』と『消費』」と述べ、「提言を十分に参考にさせていただきながら、新たなビジョンの取りまとめを進めていきたい」と語った。政府は現在、新たな閣僚会議である「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を立ち上げ、訪日外国人旅行者2000万人の達成後を見据えた、中長期的ビジョンの策定に向けた検討を進めているところ。

会合の様子  新たな提言は「アクション・プログラム2015」に沿った6テーマ・39項目で構成。「インバウンド新時代に向けた戦略的取組」として7項目を、「観光旅行消費の一層の拡大、幅広い産業の観光関連産業としての取り組み、観光産業の強化」として3項目を、「地方創生に資する観光地域づくり、国内観光の振興」として10項目を、「先手を打っての『攻め』の受入環境整備」として11項目を、「外国人ビジネス客等の積極的な取り込み、質の高い観光交流」として3項目を、「リオデジャネイロ大会後、2020オリンピック・パラリンピック及びその後を見据えた観光振興の加速」として5項目を、それぞれ取りまとめた。

 「インバウンド新時代に向けた戦略的取組」では、ビザ取得要件の緩和について引き続き拡充の必要性を訴えたほか、外国人旅行者数のさらなる拡大に向けた相手国との双方向交流促進を求めた。また、日本の魅力の発信のためにはビッグデータを活用した科学的なマーケティングが必要であるとし、可能な限りさまざまなデータを迅速かつ積極的に公開することを求めた。「観光旅行消費の一層の拡大、幅広い産業の観光関連産業としての取り組み、観光産業の強化」では、さらなる免税手続きの簡素化や、外国語を話す人材の優遇、教育プログラムの確立などを要望した。

 「地方創生に資する観光地域づくり、国内観光の振興」では、世界に通用する広域観光周遊ルートの構築と発信、観光振興による東日本大震災の被災地の支援などの必要性などを強調した。「先手を打っての『攻め』の受入環境整備」では、首都圏空港の機能強化や出入国手続きの迅速化などのほか、通訳案内士不足の解消に向けた制度の見直し、民泊に関する早急な法制度やルールの整備などを訴えた。また、公共交通機関におけるICカードなどの普及、深夜・早朝時間帯における空港へのアクセス改善なども急務とした。

 「外国人ビジネス客等の積極的な取り込み、質の高い観光交流」では、MICE誘致対策として特にミーティングとインセンティブの分野における誘致強化や、ユニークベニューの活用、主催者への寄付金に対する手続きの簡素化などの項目を盛り込んだ。「リオデジャネイロ大会後、2020オリンピック・パラリンピック及びその後を見据えた観光振興の加速」では、スケジュールに見合った外国人受入環境の整備や、事前のプロモーションによる大会開催効果の地方への波及などを求めた。

 なお、協議会の16年度の事業計画については、15年度の活動を継続するとした。17年1月の第4回会合の実施のほか、幹事会や専門部会の開催、新たな提言の取りまとめをおこなう予定。また、今年9月に「観光立国推進フォーラム」の開催を予定するほか、タウンミーティングや学生向けの川柳コンテストの実施、協議会ウェブサイトでの情報発信などにも引き続き取り組む。