双方向交流に向け海外旅行振興へ、若者と地方を国際化-EXPOより

異文化交流で海外を身近に、修学旅行や姉妹都市提携など活用

海外旅行シンポジウムの様子  9月末におこなわれたツーリズムEXPOジャパン2015では、「ALL JAPANで双方向交流を! ~異文化理解が人を育て、地域を活性化させる~」をテーマに海外旅行シンポジウムが開催された。増加する訪日旅行需要に注目が集まるなかで、2014年の日本人出国者数は3.3%減の1690万3000人と海外旅行需要は低迷。これに対して、観光庁長官の田村明比古氏は9月16日の専門誌会見で「(海外旅行と訪日旅行の)双方向のバランスがとれた行き来が重要」と話すなど、双方向交流に向けた海外旅行需要の喚起が課題となっている。シンポジウムでは課題の解決に向け、海外旅行の必要性や改善点などについて議論された。


パネリスト
新潟県知事 泉田裕彦氏
在日米国大使館 商務部上席商務官 百合・アン・アーサー氏
JTBワールドバケーションズ 代表取締役社長 井上聡氏

モデレーター
KNT-CTホールディングス 執行役員海外旅行・訪日旅行部長 池畑孝治氏


双方向交流で観光立国へ、訪日ブームの今こそ海外旅行を活性化

KNT-CTホールディングス執行役員海外旅行・訪日旅行部長の池畑孝治氏  シンポジウムではまず、モデレーターを務めたKNT-CTホールディングス執行役員海外旅行・訪日旅行部長の池畑孝治氏が、日本の旅行市場の現状について報告。日本人海外旅行者数は12年に1849万人と過去最高を記録して以降、中国や韓国との政治問題、円安、イスラム教過激派組織ISILなどの影響で減少しており、今年は1600万人程度に留まると予想される。一方、訪日外国人旅行者数は急増しており、今年も9月10日時点で昨年の1349万人を上回り、通年では2000万人への到達も見込まれる。

 なお、日本政府では観光を国の重要な成長分野と位置づけ、03年から「観光立国の実現」を掲げている。政府が策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」でも、訪日外国人旅行者数の増加にのみ着目するのではなく「相互の文化慣習への理解を含めた受入意識の醸成をはかっていくことが求められる」と示されるなど、海外旅行を含めた双方向交流の拡大が課題となっている。

 JTBワールドバケーションズ代表取締役社長で、日本旅行業協会(JATA)海外旅行推進委員会の海外旅行政策提言部会にて部会長を務める井上聡氏は、これらの現状を踏まえ、JATAでは今年の政策提言でツーウェイツーリズムによる交流立国の実現を掲げた旨を説明。「日本から海外、海外から日本の双方向交流があってこそ、交流立国は成り立つ」とし、「訪日外国人旅行者が増加している今こそ、相手の価値観を理解できるチャンス」と強調した。