インタビュー:楽天トラベル事業国際営業統括部部長の幅屋太氏
海外事業をアジアNo.1に
宿泊施設との関係強化で「数だけでなく深さも」追求
楽天は同社のトラベル事業において、海外旅行需要のさらなる取り込みに向け、さまざまな取り組みをおこなっている。今年の9月には、海外航空券の卸売販売をメインに展開するワールドトラベルシステム(WTS)を子会社化。これにより、楽天トラベルは海外航空券を直接仕入れることが可能になり、海外旅行商品のラインナップも拡充したという。「楽天トラベルというブランドとして生き残り成長していくためには、国内旅行以外の強化も必要」と話す楽天トラベル事業国際営業統括部部長兼WTS代表取締役社長の幅屋太氏と楽天トラベル事業国際営業統括部東アジア・ハワイ・ミクロネシア統括グループエリアリーダーの吉田茜氏に、同社の海外旅行への取り組みと今後の目標を聞いた。
-貴社の海外旅行事業について改めて教えてください
幅屋太氏(以下、敬称略) 海外事業ではメインの宿泊施設の販売に加え、航空券や航空券と宿泊の組み合わせが可能なダイナミックパッケージを取り扱っている。我々の基本的な任務は、サプライヤーである宿泊施設に対し、客室を販売しやすいインターネットシステムを提供し、売り上げを伸ばしてもらうこと。宿泊施設に対するコンサルティングをメインにおこなっており、そのなかには一般の旅行会社の「仕入れ」作業に入る、部屋の在庫管理も含まれる。
楽天トラベルはOTAとしてはとてもユニークだ。一般的なOTAはいかに多くの宿泊施設とお客様を集めるかという点に重きを置いている場合が多いが、我々は宿泊施設と利用者をマッチングさせることを目的にしており、「このような層のお客様にはこのようなホテル」などと、よりターゲットを絞って展開している。数の多さだけに重点を置くと「商品がたくさんあればたくさん使ってもらえる」という考え方になり、あまり顧客満足度の向上にこだわれなくなってしまう。
このため、(楽天トラベルが)一般的なOTAであると言われると少し違和感がある。我々は数を追求する「OTA」と質を求める「日本らしくホスピタリティの高いエージェント」との中間として、両方の良い面を意識している。
現在、海外事業では世界を4地域に分類し、22ヶ所に拠点を置いている。4地域のうち、取扱高の約半分を占めるのが「東アジア、ハワイ、ミクロネシア」エリアで韓国、台湾、香港、ハワイ、グアム、サイパンをメインとしている。
このほかはシンガポールやタイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インドネシアを含む「ASEAN」エリアと、北京に本社を置く「中国」エリア、その他の「欧米」エリアだ。楽天トラベルは楽天グループの1事業であるため、他の事業と同じ地域に拠点を設けている場合が多い。例えば、ロサンゼルスはハリウッドが有名だが、他の事業の拠点があるオレンジカウンティに事務所を設けている。
我々のターゲットはFITなので、ダイナミックパッケージ以外のパッケージツアーは取り扱っていない。日本人のFITは近場の東アジアのシェアが高いため、我々の場合もFIT化が進んでいる東アジアなどの取り扱いの比重が大きい。人員ベースでは「東アジア、ハワイ、ミクロネシア」エリアが全体の半分以上を占め、そのほかは「ASEAN」が20%、「中国」が15%、「欧米」が15%程だ。