観光と文化の共存が重要、持続可能な観光産業へ-ツーリズムEXPOより
観光と文化のバランス重視、平和への貢献を
文化の維持、創出で観光振興へ
観光と文化の協力でシナジー創出へ
持続的な観光はかり、人材育成を
基調講演後のシンポジウムでは、観光と文化の協力の重要性を指摘する声が多く挙がった。冒頭で登壇した観光庁長官の田村明比古氏は、国連世界観光機関(UNWTO)のデータを引用。2014年の国際観光客到着数11億3800万人が、20年には13億人に達する見通しであるとし、「魅力あるデスティネーションになるために、文化はコンテンツとして重要」と語った。その上で、「各国が観光資源の掘り起こしや磨き上げをおこなうなか、文化資源に着目した今回のシンポジウムはまさに時宜を得たもの」であるとした。
また、UNWTOアジア太平洋地域部長のスー・ジン氏は、今年2月に国際連合教育科学文化機関(UNESCO)とUNWTOが旅と文化をテーマにした世界会議を共催したことに触れ、「旅と文化が『結婚』したという画期的な出来事」と語った。その上で、「観光と文化がともに手を携えることで、より大きい力が生まれる」と語り、協力の重要性を説いた。
京都市長の門川大作氏は、京都における文化の保存と、それを踏まえた継続的な観光に関する取り組みを紹介した。門川氏は、自身が会長を務める世界の歴史都市間の組織「世界歴史都市連盟」について言及し、「同連盟には62ヶ国・地域から107都市が加盟しているが、100万人以上の都市で1000年以上都市機能が継続しているのは京都だけ」と説明。大都市で新しい技術を取り入れた産業振興をはかるとともに、伝統文化を維持するために「過度な効率性や競争から距離を起き、節度を保つ」都市政策をおこなっていると話した。同市では景観を保護するために建物の高さやデザイン、屋外広告物の規制をおこなっており、今後も継続して取り組んでいく方針だ。
また、同氏は観光産業で働く人々は非正規労働者が多い点を指摘。持続可能な観光のためには「彼らが文化的な生活ができる環境の確立が必要」と説いた。同氏によると、京都市内の観光従事者のうち7割が非正規労働者だという。これを受け、ラミー氏も「観光産業は従来の製造業や金融サービス、通信分野よりも雇用の質が低い」と指摘。このため、UNWTO世界観光倫理憲章では観光業界や政府が一丸となって取り組むべき内容として、労働問題に触れていると語り「観光産業の持続的発展のためにしっかり取り組んでもらいたい」と呼びかけた。