官民連携で地方創生、キーワードはICTと若者-じゃらんシンポより
地域の観光振興にICT活用を
若者に体験促しリピーター化へ
観光による地方創生は国の重要課題
ビッグデータを基本に戦略立てを
また、観光庁地域資源課課長の長崎敏志氏が登壇し、観光による地方創生の重要性を改めて強調した。政府は今年6月に発表した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」において、観光による地方創生を国の重要な課題として位置づけているところ。
長崎氏は国として観光による地方創生に注力するなか、地方が抱える問題の1つとして、地域の観光が戦略として成り立っていない点を指摘。「観光協会でお勧めの宿を尋ねると、えこひいきにならないように特定の宿の名前を伝えないことがある」など、地域での消費につなげる取り組みがうまく機能していないと語った。
加えて、プライバシーなどの問題はあるが「GPS調査で観光客の動向を調べるなど、ビッグデータを活用することが、アクセスを整備したりお店をつくったり、観光の戦略を立てる基本になる」との見解を示した。その上で、じゃらんと伊勢市での取り組みのように「地域1つ1つの取り組みを学び、観光庁としてどうサポートできるかを考えていきたい」と意気込みを述べた。
地域内で情報連携
持続的な観光振興を
続いて、登壇した三越伊勢丹研究所の柴田香織氏は、民間企業における地方創生の取り組みについて紹介した。同社では、地方創生事業として「日本にある素材を日本人の目でみつめなおし、内外に向けて発信する」(柴田氏)ことに力を入れている。例えば、消費者向けに日本の食をテーマにしたフリーペーパー「伊勢丹 for FOODY」を配布。若手のバイヤーが地方で出会った食材や人を紹介する特集を掲載するなど、地方の魅力を積極的に発信しているという。
柴田氏は各地方を訪れる中で、日本社会の「縦割り文化」が、観光客が求める情報にアクセスしにくい状況を作り出していると指摘した。例えば宿に泊まって地元の食材について問い合わせても「他の人がやっていることはよく知らないと言われ、1つの情報から次の情報に繋がっていかない印象を受けた」という。同氏は05年にイタリアに留学した際「イタリアでは宿の主人に自分の興味を伝えると、向こうから色々な素材をどんどんプレゼンしてくれた」と振り返り、情報の連携により旅行者の利便性が高まると説明。加えて「他人の真似をせずローカルならではの魅力をつくることが重要だ」と述べ、日本の地方自治体は成功したモデルケースを真似しがちであることを問題視した。
これを受け、長崎氏も、地方自治体からの予算の申請書の内容が「どの地域も、ゆるキャラとB級グルメばかり」とコメントし、「すべてのゆるキャラが成功するわけではない。地域の素材で何がしたいのかをもっと考えてほしい」と自治体に向けてアドバイスした。柴田氏も「ゆるキャラやB級グルメは一時的に人気が上がるが、すぐ下がってしまうもの。急激な動きはなくとも地域の観光が持続的なビジネスとして保たれることの方が意味はある」と賛同した。