観光庁、16年度概算要求は4割増の142.6億円-地方活性に注力
国土交通省はこのほど、2016年度の予算概算要求で、観光庁関係の要求額を今年度予算比の43%増にあたる142億600万円とした。同省全体では15%増の6兆6791億円を要求。観光庁関係は同省全体の要求額の伸び率を大きく上回る結果となった。
16年度予算では4項目を設定。最も多いのは「『2000万人時代』への万全の備えとインバウンド観光による地域活性化」で、48%増の124億7300万円を要求した。このうち、成長戦略などの重点分野に対して設定した「新しい日本のための優先課題推進枠」は71億5000万円。このほか「国内観光推進のための観光地域づくり」は23%増の13億4400万円、「観光産業振興」は1%増の6300万円、「その他(経常事務費等)」は9%増の3億3700万円を計上した。
復興枠では「福島県における観光関連復興支援事業」を継続。15年度と同額の3億7400万円を要求した。復興枠を含む総計は40%増の145億8000万円となった。
▽「2000万人時代」への万全の備えとインバウンド観光による地域活性化
同項目では、新たに「『2000万人時代』に備えた受入環境整備緊急対策事業」として4億円を計上。急増する外国人旅行者の要望や不満の把握を目的に、今年立ち上げた「地方ブロック別連絡会」や、ソーシャルメディアやアンケートを活用し、外国人旅行者の要望や不満を収集する。
加えて、宿泊施設不足への対応、貸切バスの路上混雑解消、安心安全の確保、外国人向けの観光案内所の機能向上などの受入環境整備の課題に迅速に対応するため、環境整備のモデル事例を創出。全国各地にモデル事例を普及させることで、全国的な取り組みの加速化をはかる。例えば、宿泊施設不足への対応では、各地域の空室状況において、よりリアルタイムな情報提供ができるシステムの構築をはかる。
また、「ビジット・ジャパン関連」として43%増の115億300万円を要求。「日本政府観光局(JNTO)運営費交付金」で52%増の99億5500万円、「国際会議等(MICE)の誘致・開催の促進」で24%増の2億3500万円、「訪日旅行促進事業」で1%増の13億1300万円を計上する。
ビジット・ジャパン関連では、地方への誘客と地方での旅行消費の拡大に注力していく方針。地方誘客プロモーションとして、地方空港へのLCCなどの新規就航の促進、訪日教育旅行の地方への拡大をはかる。訪日教育旅行では、20年までに教育旅行の年間訪問者数を13年の約4万人から5割増やすことを目標とする。また、東京オリンピック・パラリンピックを契機とした訪日プロモーションの本格化をめざし、16年のリオ五輪からプロモーションを展開するとともに、大会後には全国各地で開催される文化プログラムを海外に発信していく。
地方での消費拡大プロモーションでは、2000万人達成の時点で訪日客の旅行消費額を4兆円にする目標のもと、地域のショッピングエリアをめぐるコースなどを海外に強くアピールしていく。加えて、欧米などを対象に長期滞在を促すことで、消費拡大をめざす。
さらに、今年4月の日中韓大臣会合の結果を踏まえ、3ヶ国の域内外の観光交流拡大をはかるため、協力して具体的な協議を進めていく。3ヶ国間の人的交流規模については、2020年に3000万人を目標とした。このほか、都市・地域のMICEの誘致力を高めるとともに、MICE誘致のためのプロモーション強化もおこなっていく。
また、概算要求では「広域観光周遊ルート形成促進事業」として81%増の5億5000万円、「通訳ガイド制度の充実・強化」として1%減の2000万円を計上。広域観光周遊ルートについては、6月に7つのルートを認定しており、今後はマーケティングや受入環境の整備、滞在コンテンツの充実、旅行商品造成のための調査などについて、支援をおこなっていく。通訳ガイドについては「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」での議論などを踏まえ、登録制度の見直し、研修制度の導入を見据えた運用方策について、検討と調査を実施する。
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