ANAHDの1Q、売上・経利が過去最高、訪日客増加-JWは黒字化へ

  • 2015年7月29日

 ANAホールディングス(ANAHD)の2016年3月期第1四半期(2015年4月1日~6月30日)の連結業績で、売上高は前年比7.0%増の4138億円となり、過去最高を記録した。ANAHD取締役執行役員の平子裕志氏によると、国際線事業を中心に旺盛な訪日需要の取り込みや円安基調などが奏功したという。

 営業費用は事業規模の拡大などで増加したが、燃油市況の下落やコスト構造改革の成果もあり2.8%増の3971億円に抑えた。こうした状況の結果、営業利益は4725.6%増の167億円と歴代2位を記録。経常損益は過去最高の159億円(前年:25億円の赤字)、純利益は140.0%増の83億円だった。

 航空事業の売上高は6.6%増の3571億円で、営業損益は152億円(前年:11億円の赤字)。国際線はビジネス客が堅調に推移したことに加え、訪日需要を積極的に取り込んだことで、旅客数が13.1%増の191万人、旅客収入が9.2%増の1193億円とともに増加。訪日客については国際線の3割を占めており、内際合わせた全路線で73%増と伸長。特に中国線が好調で「ほぼ倍増の勢いで伸びており、搭乗率も13%増えた」(平子氏)という。

 一方、国際線の旅客単価は、中国など近距離路線の訪日客の増加や燃油サーチャージの値下げなどにより、3.4%減と減少した。座席供給量を表す座席キロは2.7%増、旅客輸送量を表す旅客キロは8.5%増で、利用率は3.9ポイント増の73.0%だった。

 第1四半期は6月に成田/ヒューストン線を新規開設し、米国南部や中南米へのアクセスの良さを活かしてビジネス需要の取り込みをめざしたほか、成田/シンガポール線を増便し、北米/アジア間の乗継利便性の向上をはかった。また、海外ではANAブランドと日本の魅力を伝えるプロモーションを継続しておこない、ブランドの認知度向上と訪日需要の喚起に努めた。

 一方、国内線は北陸新幹線開業などの影響で旅客数は0.6%減の991万1000人と減少したが、需要動向に応じた運賃設定や機材変更による受給適合を推進したことで、旅客収入は2.7%増の1523億円となった。平子氏は北陸新幹線の影響について「見込んでいた通り、旅客数で4割減、収入で5割減が続いている」と語り、今後取り組みを進めるべきと指摘。しかし、国内線を利用する訪日客が増加傾向にあることから、今後の成長に期待できるとした。ANAHDによると、第1四半期の訪日客数は25%増の28万人で、国内線全体の2.8%を占める。今年度の累計は15%増の115万人となる見通しだ。

 このほか、国内線の単価は昨夏に運賃を値上げした効果や受給適合の取り組みなどで3.3%増と増加。座席キロは2.5%減、旅客キロは0.7%増で、利用率は2.0ポイント増の61.2%と改善した。

 マイレージ収入や整備受託収入、バニラ・エア(JW)などからなる航空事業におけるその他の収入は、22.1%増の467億円。JWについては、当初は第1四半期は赤字を見込んでいたが、平子氏は「営業利益ベースで収支は0」の状況であるとし、順調に推移していると説明。第2四半期は黒字化する見通しだ。特に訪日客が好調に推移しており、海外での航空券販売は全体の8割を占めているという。平子氏は「15年度の黒字化に向けて頑張っていきたい」と意気込みを語った。

 航空事業以外では、航空関連事業として空港地上支援業務の受託増などで、売上高は7.9%増の578億円となったが、生産規模に連動した費用の増加により営業利益は30.8%減の19億円となった。旅行事業では売上高は1.1%減の363億円で、営業利益は28.6%減の5億円。売上高では、国内旅行は関西、沖縄方面を中心に好調に推移したことで前年を上回ったが、海外旅行は欧州のテロや韓国の中東呼吸器症候群(MERS)などの影響で前年を下回った。訪日旅行については需要を着実に取り込み、前年から伸長したという。