HIS澤田氏が語る「成功するビジネス」と未来-十人会例会から
業界関係者向けに貴重なトークショー
旅行業への思いを改めて力説
旅行業界の勉強会「十人会」はこのほど、日本旅行業女性の会との共催で最終例会を開催し、エイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役会長の澤田秀雄氏による講演とトークショーをおこなった。十人会は1995年に、澤田氏の最初の著作「旅行ビジネスという冒険」(ダイヤモンド社)の出版を機に発足しているが、今日では澤田氏が業界関係者を相手に講演やトークショーをおこなうのは極めてまれなこと。ここではハウステンボス再生に関する講演の後におこなわれ、好評を博したトークショーの模様を報告する。
海外・訪日旅行の市場の行方は
トークショーはまず、筆者による海外旅行市場の今後の予測に関する質問でスタートした。澤田氏は、現在の旅行業界を取り巻くさまざまな問題から、今後は海外旅行者数が増えることは困難との見方を提示。「長い目で見ると、日本は人口減が予想されている。今までにない厳しい状況」と説明した上で、「市場の現実を理解した上で、旅行会社は自分たちの特徴を生かして勝負するしかない」と述べた。
また、これから訪れる時代は、「“オンリーワン”を目指す新たなチャレンジの機会でもある」とし、「明らかな成長分野で戦う方が、効率的だし結果も出しやすい」と説明。成長が見込めない市場でエネルギーを浪費するのではなく、「海外旅行市場の何年か先の変化を考えて、ビジネスを考えること」の重要性を強調した。
急成長している訪日旅行市場に関しては、「アジア経済の発展とともに続くので、取り組む価値も高い」と明言。取り組みを進める際には、「旅行者が旅先で望むことはそれぞれの出身国で異なる。訪日する中国人旅行者には中国人が、タイ人旅行者にはタイ人がサービスを提供しないと難しい」とし、旅行会社は旅行者の立場に立って考える必要があることを強調した。
澤田氏はその課題の解決策の1つとして、例えば中国市場ではインバウンド強化のために、かつて経営を救済したことのある旅行会社を買収したことを説明。経営方針については、「中国人の社長にかなりの権限を与えて任せている」と述べた。一方で、「単に放任するのではなく、必要に応じて財務経理担当者を送り込む」など、要所を押さえながら仕事を任せる必要がある旨を語った。
また、「事業は他人に任せるか、自分でやるかしかない」と自らの経営観を披露。代表取締役を務め、見事に再建したハウステンボスについては、「自分で取り組まないといけないと思ったからこそ、自ら取り組んでいる」と強調した。一方で、蒲郡のラグーナテンボスについては、「効率化のポイントは簡単に分かるが、ハウステンボスよりも難易度は高い」と説明。「チャレンジャーが手を挙げて『やりたい!』というので、任せることにした」と語った。ラグーナテンボスでは、澤田氏は取締役会長を務め、代表取締役社長にはHISで新規事業開発室長などを努めた巽泰弘氏が就任している。
▽訂正案内(編集部 2015年4月28日16時45分)
・訂正箇所:第1段落第1文
誤:「十人会」はこのほど最終例会を開催し、
↓
正:「十人会」はこのほど、日本旅行業女性の会との共催で最終例会を開催し、