奈良、訪日富裕層に吉野や洞川温泉アピール-泊数増めざす
奈良県は訪日外国人旅行者のうち富裕層に対し、奈良南部の吉野や洞川温泉をアピールする方針だ。さきごろ開催されたILTM JAPANで登壇した奈良県観光局コーディネーターの濱地伊久代氏は、「奈良は訪日市場ではまだそれほど有名ではないが、たくさんの魅力的な素材がある」とアピール。特に洞川温泉は「日本の原風景が見られる場所」とし、景観の魅力を訴求していきたい考えを示した。
同氏によると、奈良は京都から鉄道で約30分から45分程度、関空から車で60分から70分、伊丹からもバスで40分程度と立地がよく「さまざまな場所から日帰りでも旅行が楽しめる」のがメリット。その一方、中国人が安いツアーで奈良を日帰りで訪れるといったケースが多く、宿泊数が伸びないのが悩みの1つだという。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2014年の外国人延べ宿泊者数(速報)は前年比16.1%減の13万8080人泊。国・地域別では中国が最も多く35%で、台湾が14%、欧州とアメリカが9%、韓国が6%と続いている。
こうした状況を踏まえ、奈良県では宿泊数の増加をめざし、南部の奈良への誘客に力を入れていく考え。特に富裕層について「施設の高級さではなく、その地でしか見れない原風景」をフックに誘致をはかる。洞川温泉は江戸時代から続く宿泊施設などがあり、濱地氏は「旅館の軒下に提灯があるなか、のんびりとそぞろ歩く、昔の雰囲気が楽しめる」と説明。さらに、近隣のみたらい渓谷ではトレッキングも可能だという。また、吉野では桜に加え金峯山寺などの「スピリチュアルな素材にニーズがある」とし、ピーアールをおこなっていくとした。