MICE人材育成「産官学が本気で連携を」-横浜商大シンポから
育成環境はまだまだ不備だらけ
魅力や可能性のアピールも必要
総合力が求められるMICE人材
プリンスホテル執行役員の徳永清久氏は、ホテル運営におけるMICEの重要性について説明。予約時期の早さや滞在期間の長さ、景気や季節変動による影響の少なさ、公的支援による催行の確実性など、多くの面でメリットがあることから「未来を担保できる」と期待を寄せた。同社では東京の高輪および品川エリアで進めている「PRINCE TOKYO MICE PROJECT」や、自治体関係者を招いての「プリンスホテルMICEフォーラム」など、さまざまな取り組みでMICEにアプローチしているところ。
ホテルで必要とされるMICE向け人材の姿としては、「全体の進捗や予算を認識できる」「柔軟性とコミュニケーション能力がある」「自分の将来像を描ける」「新しい流れや変化に敏感」などを列挙した。そのほか、プリンスホテルとしては「おもてなしの心や思いやり」「チームワーク力や協調性」「バイタリティや粘り強さ」などを備えた人材を求めるとし、さらに語学力やIT関連の能力も重視する考えを示した。
MICEが持つ可能性のアピールを
コーディネーターを務めた横浜商科大学貿易・観光学科教授の宍戸学氏は、大学におけるMICE向け人材教育の現況として、「理論ばかりでなかなか実践に入れていない」と説明。また、半年間にわたりモデルカリキュラムに基づく授業を実施したにもかかわらず、学生には「まだまだビジネスとしての可能性を伝えきれていない」と振り返った。
具体的には、仕事を通した人間形成の魅力や、人が喜ぶ場を創設することの意義、MICEによる交流拡大の効果などが、学生にアピールできていないと指摘。「MICEという分野は幅広く、1つの人材像にあてはめることは難しい」ことからも、ビジネス教育の側面でのみMICEを捉えるのではなく、さまざまな面からアプローチをはかることが重要になるとした。
今後の日本におけるMICE向け人材育成の方向性としては、単に海外の先進事例に学ぶだけでは不十分とし、「産官学で強靭な連携に本気で取り組む意志が必要」と主張。3者の役割を再確認した上で連携を強化し、長期のインターンシップなどに取り組むことを提案した。