アクセスランキング、第2種倒産が1位、「退避勧告」ツアーも

[総評] 今週は、愛知県の第2種旅行業者「ユニオン航空サービス」が事業を停止し、破産申請した記事が1位になりました。旅行会社の経営が立ち行かなくなる記事ほど心情的に載せたくないものはありませんが、多くのアクセス数を集めるのも事実です。

 この類の話題では、故意かどうかは別にして一般消費者に多大な負担や迷惑がかかるケースが往々にしてあります。日本旅行業協会(JATA)によると、今回はもともと第1種であったので弁済業務保証金制度の限度額が7000万円あり、この範囲に収まる見込みだそうで、語弊があるかもしれませんが不幸中の幸いと感じます。

 旅行会社が旅行のプロとして利益を得ていく、従来通りのビジネスモデルではそれが難しい時代になっているわけですが、この命題に対して逆説的な、あだ花のようなニュースが2位に入っています。

 記事では、外務省が退避勧告を出しているニジェールへの受注型企画旅行を「強行」した旅行会社があったことをお伝えし、観光庁、外務省、JATAの見解を添えています。

 整理して考えると、旅行会社がプロとして利益を得ることは、旅行会社にしかできないことをして対価を求めることを意味します。デスティネーションの選択もそうでしょう。個人手配のFITでは様々なリスクが伴う旅行を、旅行会社がリスクを取り除いて提供するという方法論は理に適っています。

 一方で、旅行者の人命や財産に危害が加わるような事態は絶対に避けなければなりません。問題は、このリスクをどのように評価するかです。

 現時点で目安ないし基準となっているのは外務省の渡航情報で、「退避勧告」「渡航延期勧告」「渡航是非の検討要請」「注意喚起」の4段階からなるものです。1つの国・地域の中に異なる段階が設定されることも多くあります。

 ここで生じる疑問は、リスクは4段階に分けられるものなのか、あるいはどのような基準で分けられるのか、です。

 個人的な感覚として、渡航情報は相手国との関係の強弱(=渡航者や在留邦人の多寡)によって弾力的に設定されているように思います。つまり関係が強いほど、例えば何かが発生した際の渡航情報引き上げの判断が慎重になされ、引き下げは速やかに実施されるという印象です。

 また、そもそも旅行会社のために作られたものではありませんので、同じ段階の中でも旅行会社の努力によって避けられるリスクとそうでないリスクが存在するはずです。

 もちろん、こうした事情がやむを得ないものであることは理解はできますし、外務省が邦人の安全を守るために活動しその結果として発出する情報を軽視して良い理由もありません。ただ、「旅行会社の主催する旅行を中止させる効力はない」と明記しながら、その情報を根拠にツアー催行の自粛を求めるのは不自然であると感じます。

 昨今、憲法22条の「移動の自由」に関する議論も取り沙汰されていますが、旅行会社のビジネスについては、「この状況でリスクを回避することはほぼ不可能である」ことを関係者が協議して確認し旅行の催行を禁止または自粛する、旅行会社用の渡航情報を設ける、そういった可能性はないものでしょうか。

 「誰もやらないことをやる」のもビジネスの鉄則です。効力のない情報で自粛を求めているだけでは、おそらく今後も同じような事態が起きるはずです。異論もありそうですが、旅行者の安全を守るという点で立場は一緒なのですから、双方がある程度納得のいく形で折り合いを付ける方が望ましいと考えています。(松本)

▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2015年3月第1週:2月28日0時~3月6日18時)
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