観光3団体、3000名規模の中国訪問団、訪中300万人への回復見据え
日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)、日本観光振興協会(日観振)の3団体は、「日中観光文化交流団」として、5月22日から24日にかけて3000名規模で中国を訪問する。2014年11月に上海で開催された国土交通大臣の太田昭宏氏と中国国家旅遊局長の李金早氏の会談で、2015年、16年の2年間に両国間の交流拡大に向けた取り組みを具体化することで合意したことに基づいたもの。
日中観光交流は、訪中日本人は2007年の日中国交正常化35周年時の397万人が過去最高で、2010年の373万人以降落ち込みが続いており、2014年には272万人まで減少。一方、訪日中国人は東日本大震災の影響や日中関係などの影響で落ち込んだ時期もあったが増加傾向にあり、14年は過去最高の241万人を記録した。
2月25日に開催された記者会見で、交流団の発案者であるANTA会長の二階俊博氏は、訪日中国人が増える一方、訪中日本人は減少傾向にあるとし「中国側からも度々改善する方法がないかという指摘があり、チャンスを伺っていた」と説明。今までも日中文化交流事業で訪問団を派遣していることを振り返り「凍りついた日中関係の打破」のためにも、「こうした取り組みを少しずつでもいいから続けていかなければならない」と意義を強調するとともに「(日中関係の)問題の打開のためには、このことも一助になるのではと確信している」と語った。
中国人民共和国駐日本国特命全権大使の程永華氏も「観光文化分野での交流は相互理解を深めるためにも有効で重要。今回の行事で中日関係の改善を促進することを確信し、積極的に応援する」とメッセージを寄せた。観光庁長官の久保成人氏も「観光行政という我々の観点からも大変意義深いこと」とコメントした。
同交流団の実行委員長を務めるJATA会長の田川博己氏は、2013年の272万人はビジネス客も含んだ数字であり、レジャー市場でみると2010年の10%程度まで落ちこんでいるとの懸念を表明。「海外旅行2000万人達成のためにも、韓国同様中国も早期に300万人に戻すことが重要」であるといい、「双方向の交流を通じた相互理解の深化こそ、互いに持続的な成長をもたらすもの」であると強く訴えた。今回の大型訪中団により「民間から観光交流の復活の機運を盛り上げていきたい」考えだ。
また、田川氏は中国観光について、日中関係やPM2.5などの環境問題の影響もあるが、北京オリンピック・パラリンピックや上海万博などでの訪中が相次いだこともあり「消費者は中国旅行に飽きてきたのでは」と問題を提起。新しい旅行形態の提案の可能性を示唆した。中国現地のインフラや都市整備が進んだことで、例えば上海に1週間滞在し、周辺地域も合わせて観光するなど「中国周遊から都市部型の観光に変わるようになるのでは」という。今回の交流団では北京に滞在するが、3日目には大連や河北省の視察もおこなう計画だ。河北省については久保氏に訪問を依頼する予定。
今後は3月20日に、JATAの役員会を北京で実施。旅行会社の代表者約30名が参加し、現地の関係者と意見交換をおこない、交流団の訪問先や現地でのイベントなど、詳細を詰めていく予定だ。中国側には事前に素材の提案を求めたいとした。
また、日観振会長の山口範雄氏は両国間には85路線があり、日本の21空港から中国への便があることに触れた上で、日本の各地方にはその土地固有の歴史や文化などの観光の魅力があるとアピール。「地方間の相互交流を促進し、日本の各地域に中国人を誘致し、地方創生、地域活性化につなげていきたい」と語った。
交流団の訪中に関する主要行事は5月23日夕刻に開催予定の「日中観光交流の夕べ(仮称)」で、両国のVIPによる歓迎会やエキシビジョン、会食を実施。また、5月22日には日本の観光関係者と中国側旅行会社の商談会を、23日と24日には訪日トラベルフェアを開催予定だ。3日間を基軸とし、プレツアー、ポストツアー、視察などが前後におこなわれる見込み。
3000名はJATA、ANTA、日観振で1000名ずつ集める見通し。観光関係者、自治体、経済界、文化団体などから集客をはかる考えで、観光関係者が中心となる見込みだ。一部パッケージツアーでの募集や、開催のタイミングに中国に旅行をしている人々への参加の呼びかけも検討しているという。
なお、日中観光文化交流団の訪中は、国土交通省観光庁、日本政府観光局(JNTO)、在中華人民共和国大使館、経済団体連合会、中国国家旅遊局、中華人民共和国駐日本国大使館が後援する予定だ。