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ロードムービーで地域を拓く-ものがたり観光行動学会・年次大会(1)

 ものがたり観光行動学会(白幡洋三郎学会長=中部大学特任教授)の第4回年次大会がこのほど、京都市右京区の東映太秦映画村、東映京都撮影所で開かれた。60人が出席した。

 映画監督田中光敏さん 「サクラサク」で地域の心に触れ
今回の大会テーマは「ロードムービー地域を拓くシネマの魅力・威力・無力」。映画「火天の城」や「利休にたずねよ」を監督した田中光敏さんが「シネマが語るものがたり」をテーマに基調講演した。

 田中さんは、自らメガホンをとり今年4月に上映された「サクラサク」(さだまさし原作)を紹介。この作品は、舞台となった福井県美浜町で原作の朗読劇を行っていた人たちの熱いラブコールによって映画化された。

 「原発のまちと言われるこの地域の文化を自分たちの手で紡いでいきたい」という地域の人たちの声と「こんなに美しい自然と文化がこのまちにあることを伝えたい」という美浜町の山口治太郎町長の思いが具体化したと話した。

 この作品は田中さんにとって初の「ロードムービー」だった。ロードムービーは旅の途中で起こる様々な出来事を映画のストーリーにしていくが、サクラサクも旅をしながら撮影したことで出演者は500人にものぼり、美浜町では1800人ものボランティア組織・サクラサク応援隊ができた。あわら温泉では、撮影スタッフの宿泊代を旅館持ちにしてくれたことや炊き出しをしてくれた地元の女性らの姿が忘れられないという。

 「そういう人たちに支えられて、福井県では4カ月ものロングラン上映になった。映画は見た瞬間で決まる。どれだけ見た人の心を揺さぶれるか。その深さが何度も何度も見たい映画になり、人に伝えたくなる映画になる」と田中さん。

 「映画の撮影に協力することで、物語の一員となった。一員になることで映画を見に行くというお金を支払う行為につながる。会社を英語でカンパニーと言うが、これは家族と一緒にパンを食べるという意味がある。一緒に映画を作り、個々で映画を見に行くというのは家族と一緒にパンを食べる行為に似ている」という持論を話した。

 

情報提供:トラベルニュース社