20年以降見据え、産学連携で観光立国の道模索-ツーリズムEXPO

業界関係者によるパネルディスカッション、
学生による観光振興策発表会など実施

20年以降のカギはインバウンドとグローバル展開

 第3部では、旅行業界から4名の識者が参加し、パネルディスカッション「2020年のツーリズム ~2020年以降のツーリズム産業を見据えて~」を実施した。パネリストには、ジェイティービー(JTB)執行役員の古野浩樹氏、日本航空(JL)執行役員の加藤淳氏、プリンスホテル執行役員の徳永清久氏、オリエンタルランドマーケティング本部副本部長の笠原幸一氏が登壇。参加した学生たちに向け、各社の中長期計画や取り組みなどを語った。

JTB執行役員の古野浩樹氏 JTBの古野氏は冒頭、IT技術の発展やアジア市場の拡大などの環境変化により、「法人需要・個人需要を問わず、グローバルでの競争を強く意識するようになった」と述べ、同社でもM&Aなども含めて、グローバル企業化に向けた展開を進めている旨を説明した。一方で、IT技術の発展に伴い日本市場にも参入し始めたAirbnbなどの新たなビジネスモデルについては、「既存の旅行会社はコンプライアンスなどの観点から手を出さない部分だが、インバウンド需要などの増加を考えると無視できない」とし、「危機感を持っている」と語った。そのほか、LCCの浸透についても言及し、「ダイナミックパッケージと着地型商品を合わせた商品の造成など、日々知恵を絞っている」と伝えた。

JL執行役員の加藤淳氏 JLの加藤氏は、航空会社各社では現在、政府が定めた2020年の年間訪日外客数2000万人の目標設定に合わせた投資を進めていることを紹介。「目標を掲げるのなら実現しなくてはいけない」とし、「我々も全力を尽くす」と強調した。現在のインバウンドを取り巻く状況については、「ビザが免除になった国が少し増えたという程度で、まだまだ門戸は開いたばかり」との見方を提示。「もっと外国人の目線で、来やすい国にならないといけない」と述べ、東京オリンピック開催を契機として、さらなるインフラ整備をおこなう必要性を訴えた。

 加藤氏はそのほか、アメリカン航空(AA)やブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とのジョイントベンチャーにより外国人客の取り込みに注力していることや、今後は海外でもマーケティング活動を活発化させる考えがあることについても述べ、これらの取り組みを基に2020年以降に備えていることを学生たちにアピールした。

プリンスホテル執行役員の徳永清久氏 プリンスホテルの徳永氏は同社のグローバル展開について触れ、昨年に米大手のマリオット・インターナショナルとの連携を決めたことや、10月に台湾、12月にはタイで事務所を開設する予定を伝えた。その上で徳永氏は「2020年以降はもっと早いペースで取り組まなくてはいけない」とし、今後は「日本のホテルのオペレーション力をいかにパッケージ化して(海外に)出していくか」が課題になるとした。また、海外市場に対しては、大都市だけでなく地方のホテルのアピールも課題になるとし、2016年以降、地域との協働や地域間連携に注力する考えを示した。

オリエンタルランドマーケティング本部副本部長の笠原幸一氏 オリエンタルランドの笠原氏は、訪日外国人旅行客の増加について「大変注目している」と述べるとともに、昨年の外国人来場者数が約120万人に上ったことを報告。全体の来場者数に占める割合は約4%で現時点では大きな規模とは言えないものの、「2倍、3倍になる」との見方を示し、受入拡大に意欲を見せた。なお、現在の外国人来場者は台湾や香港など中華圏からの旅行者が中心となっているが、今後は東南アジア人の増加も期待できるとの見方を示し、情報発信や受入体制の整備に注力するとした。