旅行市場の鍵は女性や一人旅、付加価値のある旅を-JTB総研セミナー(2)

  • 2014年10月2日

付加価値のある「ちょっといい旅」人気
女性の一人旅に変化の兆しも

パネルディスカッションでは活発な意見が交わされた  JTB総合研究所の第1回旅行マーケットセミナーでは、第2部で「旅行マーケット変化の予兆を捉える」をテーマにしたパネルディスカッションが開催された。ディスカッションでは、第1部でキーワードとして挙がった一人旅、若者やオンラインなどを軸にマーケットのトレンドを分析しながら議論を展開。今後の市場活性化や需要創造についてのヒントを探った。

コーディネーター
JTB総合研究所主席研究員 黒須宏志氏

パネリスト
マーケティングライター 牛窪恵氏
ウィラーグループ代表取締役 村瀬茂高氏
JTB総合研究所取締役コンサルティング事業部長 小里貴宏氏


付加価値のある旅や「メリハリ商品」に人気集まる

ウィラーグループ代表取締役の村瀬茂高氏  プレゼンテーションではまず、高速バスツアー事業を展開する村瀬氏が今夏のマーケット傾向について、「付加価値商品の販売が増加した」と説明。「広い座席、清潔な車内など、付加価値に合わせた価格が正当に評価されてきている。一方で、差別感のないものの売れ行きは悪い」と語った。

 ウィラーのビジネスモデルは「人が移動する仕組みをつくって人を元気にして社会を豊かにする」というもの。新幹線や航空ネットワークの発達などにより、大都市と地方とのローコストなネットワークが失われてきたことから、高速バスによる事業を始めたという。現在では、女性、一人旅、若者のセグメントでの価値を見極めながら、オンラインを利用して事業を拡大しているところ。村瀬氏は「ネットで得た情報を情報だけで終わらせず、それを体験できる仕組みづくりが大切」と強調した。

 今後の展開としては「地方の交通システムでイノベーションを起こしたい」考え。大都市と地方を結ぶだけでなく、到着地域内で公共交通機関を利用して旅ができる仕組みをつくり、個人旅行市場の拡大をねらう。ウィラーは新規事業として北近畿タンゴ鉄道の運営に携わることから、「まずは丹後地方から始めて、全国に拡大していきたい」と意気込みを話した。

 「おひとりさま(マーケット)」や「草食系(男子)」などの流行語を創りだした牛窪氏は、消費トレンドについて言及。「東日本大震災以降、普段の消費は抑えるが、思い入れや記念となるものにはお金を使う。メリハリ商品に対する消費行動は現在も続いている」と指摘した。また、現在の懸案として消費税アップと円安を挙げ、「先が見通せないから、お金を使わない。消費税や円安についても、政府がもっとアナウンスの仕方を工夫する必要があるのではないか」と提言した。

 以上の議論を受け、小里氏はJTB総合研究所の調査結果から「総じて『ちょっといい旅』の志向が強まっており、少し高くてもいい旅を求める層が増えている」と報告。コモディティー化を打破していくためには、重要な視点だとした。また、最近の市場傾向として間際化の鈍化が進んでいるとし、「『ちょっといい旅』志向とつながっているのではないか」と分析。今後の需要拡大のためには価格を下げるのではなく、「業界の垣根を超えて、これまでにない価値を提供していくことが必要」と主張した。