戦略なき特区に疑義アリ(3) 拙速、不透明に不信感
-特区構想で危惧される問題点をさらにうかがいます。旅館業法の特例についてもう少し教えてください。
北原 厚生労働省はこれまでウィークリーマンションや1週間程度で短期賃貸するものは、宿泊業に限りなく近いグレーゾーンとして指摘してきました。これが適用除外になると、大っぴらにやってもいいということになります。
アンフェアな特例措置
岡本 平成17年3月29日付けで、厚生労働省は「ウィークリーマンションの取り扱いについて」ということで文書を出しています。寝具やリネン類を提供しない、1週間以上の利用を原則とする、旅館業と紛らわしい内容を標ぼうしないなどの指示を出しています。にもかかわらず厚生労働省は、今回真逆のことをやっているんです。
北原 現在日本にはものすごい数の空き家とマンションの中に空室がある。これを有効活用できるなどという発想で、内閣府がこういう法律を政令で作られた。しかし、それは旅館業法に基づいて営業許可をきちんと申請してやっていることをまったく意味のないものにしてしまう。
岡本 我々は旅館業法、消防法、風俗営業法に基づいていろんなコストをかけているんです。特に消防の面では、新しいマル適マークでさらに厳しくなって取りづらくなっています。そんな中でまったく違う、住居の消防法に基づいている。どんだけコストが違うのか。税金も、固定資産税は住居と我々とでは全然違うんです。消費税も事業に使う分に関してはかかりますが、一般住居の家賃には消費税はかからない。それなら、今回の特例ではどうするのか、そんなところもきっちりと論議されていない。
北原 それなら自由競争の下で、我々も営業許可を取得することなく、自主的に消防法に鑑みてちゃんとした設備を整え、自分たちで点検をしてお客様の安全を確保し、保健衛生上の基準も絶えず我々の手で管理してやったらいいじゃないですか。なんで、突然参入してくる業界の方だけが特典を受けられるのかが一向に理解できない。
これまでにも、そういった施設はゲストハウスを含め簡易宿所という名前で営業許可を取ってやられているではないですか。京都府下でも簡易宿所の営業許可は年々増えて、今や900軒あるんです。我々、旅館業法の許可を取っている数より多いんです。そこも入れたら、すごい収容能力です。簡易宿所の営業許可を取る要件も、ものすごく簡単になり、1棟貸しの場合はフロントの設置義務もありません。
岡本 その上、賃貸住宅に宿泊を受け入れて、外国から来た人が本当に利用するんかいなとも思います。我々が海外に行ったときは地元の人との触れ合いなりを求めています。大阪でも西成区の簡易宿所には日本人も含めて40万人ぐらい来ています。多いところで40%ほどが外国人ですけど、そういう彼らも果たして味気もないマンションで自炊をして長期に泊まるとは思えない。
情報提供:トラベルニュース社