関空・伊丹、16年から民間運営に-安藤社長、着陸料の「戦略的料金」示唆も

  • 2014年7月27日

新関空会社代表取締役社長兼CEOの安藤圭一氏 新関西国際空港(新関空会社)は7月25日、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹)の民間への運営権売却(コンセッション)に関する実施方針を発表した。運営権売却の基準価格は2.2兆円。運営権取得者は特定目的会社(SPC)を設立し、2016年1月から2060年3月末までの約45年間に渡り、両空港の滑走路やターミナルビルの運営などを実施することになる。

 新関空会社代表取締役社長兼CEOの安藤圭一氏は、現在の経営について「スピード感がなく、予算が1年ごとで縛られており、戦略的投資がすぐにできないのは事実」とした上で、「(民間が経営することで)自由度が高まることが大きい。必要な投資については収支を検討し、調達についての工作も考えながら投資できる」点をメリットとしてあげた。着陸料についても「戦略的な料金体系ができるのでは」との考えだ。

 実施方針によると、SPCは、両空港の滑走路やエプロン、駐車場、ターミナルビルなどの運営、維持管理、環境対策、関空の給油施設・鉄道施設の管理受託業務などを実施。着陸料や商業売上などの運営収入をもとに事業を展開する。また、施設の拡張として、滑走路の延長や旅客施設、店舗などへの新規投資ができる。このため、例えば新ターミナルの増設も、必要であれば可能だという。

 一方、滑走路の新設やそれに伴う着陸帯、誘導路及びエプロンの新設は、今回の実施方針の元となる「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)の関係から、運営権の業務の範囲外となり、新規投資はできない。ただし、2012年に国土交通省が決定した、関空と伊丹の一体的、効率的な設置と管理に関する基本方針では、新たな埋立などの事業は当面凍結するが、将来的な需要の拡大状況に応じ、事業採算性の検証を十分に実施した上、関係各位との調整を踏まえて空港運営事業者が判断する、と定義。新関空会社によると、以上の条件を満たせば今回発表した実施方針とは別の枠組みの中で実現することは可能とした。

 なお、基本方針では伊丹について、中央リニア新幹線の開通など周辺状況の変化を踏まえ、廃港も含め将来のあり方を運営権取得者が検討するよう求めている。安藤氏は基本方針に則って活動を展開していくことに変更はないとした。

 このほか、実施方針ではSPCに対し、現在の雇用を承継する義務や、新関空会社に対し、5年に1度の中期計画と毎年の単年度計画の作成・報告も求めている。

 また、実施方針では新関空会社の役割についても言及。2空港の滑走路などの空港資産と、伊丹の土地を所有する新関空会社が、運営権を持つSPCに対するモニタリングなどをおこない、事業が適切に実施されるよう取り組むとしている。さらに、SPCから運営権の対価を収受し、長期債務の返済や、関空土地保有会社への賃料の支払いなどをおこなう。

 運営権の対価については、毎年の支払いを求める方針。事業開始時に保証金を設定せずに毎年一定額を支払う場合、基準額である490億円以上(45年間で2兆2000億円)を支払うこととした。ただし、保証金を支払うことで、保証金の金利効果分も踏まえ支払額を減額できる方法や、売上と連動して払う方法も用意した。

 今後は実施方針の公開を受け、民間事業者からの質問や意見を8月14日まで受付し、8月28日に回答を公表。その後、10月から募集要項の配布と入札を開始し、2015年8月に国土交通省大臣の承認を得て運営権を設定、9月に実施契約を締結する。2016年1月から運営権取得者による運営を開始する予定だ。