現地レポート:北部ドイツのブレーメン、歴史とイノベーションを体感
ドイツのイノベーションを体験、宇宙や自動車テーマに会社見学
ブレーメンのもうひとつの顔がイノベーション。ドイツの航空宇宙産業や自動車産業で大きな役割を果たしている。空港に隣接するEADSアストリウムもそのひとつ。アリアンロケットなどヨーロッパの宇宙開発に深く関わっているとともに、国際宇宙ステーション(ISS)への貢献も大きい。
EADSアストリウムでは、観光客向けにツアーも実施している。館内には、実物大のISSモジュールもあり、ガイドからその利用法について詳しく説明を聞くことができる。また、宇宙食や宇宙服なども展示。知られざる宇宙飛行士の生活を垣間見ることができる点もこのツアーの特徴だ。
日本もISSに参加していることから、身近な存在として教育効果も高いだろう。ツアーは土曜日のみで通常は2時間コース。グループでの予約も可能だ。この施設は宇宙機器のほか軍事機器も製造しているため機密が多くセキュリティーは厳しい。参加にはパスポートなどのIDは必携。館内の写真撮影もNGだ。
もうひとつのハイライトがメルセデスの工場。SL、SLK、Eクラス、Cクラス、クーペ、GLKなど1日1400台が生産されているという。この工場では、観光客向けにテストコースでの乗車体験などのツアーも催行している。ザ・ロックと呼ばれるオフロードコースでは、斜度30度の傾斜壁、上り70%、下り80%の坂道、階段、ダートなどさまざまな過酷な状況をGLKで乗車体験が可能。運転免許証を持っていれば、自分で運転して、メルセデスの性能を確かめることもできる。
また、Eクラスに乗車し、サーキットコースを試す走りも体験できる(同乗のみ)。時速100キロメートル超で急カーブを曲がる感覚はなかなか味わえないもの。身体に負荷するGに耐えるために、否応なく足を踏ん張ってしまう。わずかな時間だが、あとに残る感覚は大きい。
ツアーは通常30分で1名40ユーロ。アトラクション的おもしろさがあるため、メルセデスファンや車好き以外の人も楽しめる場所だ。この工場では最新車種の開発もおこなっているため、写真撮影の制限もあるが、それが逆に興味をそそる。まさにイノベーションの最前線だ。
北部ドイツ開拓で市場の底上げを
日本からブレーメンへのアクセスはフランクフルトかミュンヘン経由。羽田国際線増枠によって羽田/フランクフルト、ミュンヘン線が開設されるなど日本とドイツ間の航空ネットワークは拡充されており、ブレーメンをはじめとする北部ドイツへのアクセスも格段に向上している。「日本からのツアーは、ランチでブレーメンに立ち寄るだけのものが多く、市内観光の時間も限られているのではないか」とはある旅行会社の話だ。
新旧見所の多いブレーメン。ドイツ観光の主流となっている南部ドイツとは違った風景や歴史文化を持つ北部ドイツのデスティネーション開拓は、ドイツ市場の底上げにもつながるだろう。
取材:山田友樹