観光庁、宿泊施設の情報発信強化、方向性決定-FIT層取り込みへ
観光庁はこのほど、訪日外国人向け宿泊施設の情報発信強化に向けた現状と課題、また今後の方向性に関しての取りまとめをおこなった。宿泊施設の情報提供については、2013年4月の観光産業政策検討会提言で必要性が指摘され、仕組みを導入していく方針が示されていたところ。今回、特に海外からのFIT層を念頭として、基本情報をまとめたウェブページの開設や旅館ブランドの構築をおこなう方針を固めた。
現状と課題については、FIT層の旅行行動が旅行商品の流通構造を変化させている中で、宿泊施設側も市場の変化に応じた情報発信が必要と指摘。しかし、現状では宿泊施設はこれまで旅行会社からの送客に頼ってきたところが多いため自ら情報発信をする意識が低く、効果的な情報発信をおこなう施設はごく少数だとした。
これに対する今後の方向性として、まず日本政府観光局(JNTO)がFIT層のニーズを日ごろから調査、把握し、その結果を宿泊施設と共有する仕組みを構築する。また、日本の多様な宿泊施設の全体像を把握できるようJNTOのウェブサイト内に「窓口サイト」を開設する。窓口サイトは宿泊業界団体や地域などにリンクを張り、最終的に個別施設のウェブサイトでの直接予約に誘導したい考え。
一方、宿泊業界団体には、外国人旅行者の受け入れについての意識向上や、団体に所属する経営者に対し情報発信に関する意識改革、経営改善などに関する研修の開催を求める。また、各宿泊施設が提供する基本的な設備やサービスの内容が他との簡単に比較できるよう、共通フォーマット「ファクトシート」を作成する。ファクトシートは各施設のウェブサイト上での掲出を基本とし、将来的には横断的な検索の可能性も模索したいという。
このほか、旅館についての認知や理解の向上をはかり、国や宿泊業界団体が共同で「旅館ブランド」の構築をおこなう。在日外国人向けの旅館体験モニターツアーの実施も検討する。
個別の施設では、外国人旅行者の受け入れ、取り込みの意識を向上するとともに、自分の宿が取り込もうとしているFIT層を見定めてニーズを把握し、ファクトシートを活用して、わかりやすい情報を掲載した自社のウェブサイトの作成や更新をおこなう。また、情報発信に対する問い合わせなどに適切に対応するための体制を整備する。
さらに、地方自治体、観光協会などでは、訪日外国人に対する情報発信の中で、宿泊施設の魅力について積極的に訴求し、行政区域にとらわれない、訪日デスティネーションとして一体感のある広域的な情報を提供。またこれを実現させるための関係者間の連携強化をおこなう。さらに、日本到着後の外国人旅行者に対し、観光案内所などの情報提供の充実をはかる。
こうした各主体の動きの中で、観光庁としては、宿泊施設に関する窓口サイト開設、旅館ブランド構築、ファクトシート作成などに関与するほか、宿泊施設に関する情報発信の改善に向けた全体統括などに取り組む。また、先進的、効果的に情報発信をおこなっている施設や団体、地域のベストプラクティス集の編纂や、こうした主体に対する表彰などの実施も検討する。