国内旅行造成、運輸業と連携強化、地域活性も-JATA経営フォーラム
LCCの台頭や高速バスや新幹線網の整備などの「人の移動」に関する変化をはじめ、時代とともに大きく変化する国内環境。旅行会社もこの変化に呼応し、新たな発想で旅行商品を造成する必要に迫られているといえよう。2月26日の「JATA経営フォーラム2014」分科会B「環境変化に伴う、これからの国内旅行商品を提案する」では、旅行会社、鉄道、高速バス、LCCの4社で、今後の国内旅行商品のあるべき姿を考えた。
モデレーター
クラブツーリズム 取締役地域交流部長 梶田隆弘氏
パネリスト
ジェットスター・ジャパン(GK) 取締役常務執行役員 藤岡秀多氏
東日本旅客鉄道(JR東日本) 営業部次長 高橋敦司氏
ジェイティービー(JTB) 国内商品事業本部副本部長 平野利晃氏
WILLER EXPRESS JAPAN 代表取締役社長 村瀬茂高氏
鉄道や高速バス、LCCが新需要を創造、地域との連携も
分科会Bでは、まずは国内の移動手段の現状について話し合われた。近年、新幹線網の拡充や食をテーマにした列車「東北エモーション」の成功が話題の東日本旅客鉄道(JR東日本)。しかしその一方で、行き先である地方都市は、少子高齢化で人口が減少。特に東北圏は深刻で、そこにいかに人を送るかが同社の課題となっている。「究極、観光こそが世の中を救う」と語るのはJR東日本営業部次長の高橋敦司氏だ。
また同社では、鉄道会社でありながら着地観光にも取り組んできた。地域事業者であり、ランドオペレーターとして、各路線の着地支社が地元の魅力を引き出し、首都圏で旅行商品「びゅう」を販売。今やその利用者は年間300万人に上っている。
この10年間で飛躍的に需要が伸びた移動手段といえば、高速バスもその一つだろう。利用者は2004年の2万3000人から2011年には750万人に増え、ピンクのバスで知られるWILLER EXPRESS JAPANも年間200万人を取り扱うまでに急成長。同社代表取締役社長の村瀬茂高氏は「新しい市場を創造した結果」と話す。事実、利用者の6割がビギナーで、そのうちの7割が初めて高速バスを利用。また女性が6割、20代が5割を占めているのも特徴的だ。
この新しい需要を同社では、「バスのプレゼンスを上げることで創造していった」(村瀬氏)と見る。あのバスなら乗りたい、この料金なら乗りたい、という利用者のニーズを、インターネットで分かりやすく示していったのだ。
LCCはどうだろう。日系LCCの運航開始が2012年と世界に大きく遅れをとった日本だが、政府はLCCの割合を2割から3割に引き上げる意向で、その市場には大きな余地があるといえる。
2012年7月に運航を開始したジェットスター・ジャパン(GK)は現在、成田空港を拠点に10都市14路線を運航。特に、高松、松山、大分、鹿児島は同社のみが運航しており、地域とも連携を密にしている。JTB総合研究所の調査によると、LCCの利用者は75%が観光目的だ。GK取締役常務執行役員の藤岡秀多氏も「この層を増やすことが主たる目的」と話す。同調査ではLCC利用者のうちひとり旅が22.1%を占めており、新しい需要の創造にも貢献しているという。