発着枠不足がボトルネック、数年内にLCC概念消失-牛場氏予測
JATA経営フォーラム2014の分科会A「今後50年の海外旅行における旅行業ビジネスを考える」に、パネリストとして登壇した航空経営研究所の取締役副所長・牛場春夫氏は、各所の予測値などをもとに今後の航空市場の展望を述べた。
このなかで、牛場氏は日本の航空需要について、国内線は人口減少で微増だが日本発着の国際線は大幅な増加とする国土交通省の需要予測を紹介。過去最高だった2012年の5743万人(日本人/訪日客・発着合計)に対し、2022年には0.9億人、2032年には1.1億人から1.4億人、2050年には1.4億人から1.9億人を想定している。旅客構成(片道のみ)では、2013年の日本人1733万人:訪日客1000万人に対し、2020年は2081万人:2000万人、2030年には2144万人:3000万人と逆転する見込みだ。
ただし首都圏空港の発着回数は、年間空港容量74.7万回に対し、2013年で64万回に達し、約10万回の猶予しかない。しかし国交省では2022年は69万回から76万回、2032年には76万回から94万回、2050年には87万回から116万回と予想しており、牛場氏は「発着枠の問題が解消しない限り、国が目標とする訪日3000万人も難しくなってくるだろう」と、発着枠が日本の航空需要のボトルネックとなる状況にあることを指摘した。
また、LCCの展望についても言及。日本発着の国際線LCCの席数シェアは2014年1月時点で6.8%だが、2020年にはアジア路線の約30%、2030年にはアジア路線の約50%、2050年には全路線の50%になるとの予測を披露した。
その上で、牛場氏は注意すべきこととして「この数年くらいでLCCの概念がなくなると思う」との考えを述べた。その理由として、サウスウェスト(WN)などの運賃水準やメジャーエアポートへの乗入れ、ライアンエア(FR)の法人旅客需要への取組みなどの最近のLCCの動向を提示。「フルサービスキャリアに近くなっており、今後、LCCを分けて考えるのは無意味になるだろう」と語った。
なお、空港の発着枠不足は日本だけでなく世界的な課題でもあり、航空市場に変化をもたらす。例えば、航空機材では現在、小型・中型化が進んでいるが、今後は少ない発着回数で旅客を運ぶために大型化の傾向が強まっていく見通しだという。その他、パネルディスカッションの内容は、後日掲載する。