アジアの観光成長、政府の後押し重要-環境保護など義務も

UNWTO事務局長のタレブ・リファイ氏 JATA旅博の中で開催されたJATA国際フォーラムで、国連世界観光機関(UNWTO)事務局長のタレブ・リファイ氏が基調講演に立った。この中でリファイ氏は、アジア各国における観光の成長は各国政府の観光への理解によって支えられており、今後も更なる成長が期待できる一方、観光と持続可能性を結びつける義務を積極的に果たさなくてはならないと訴えた。

 リファイ氏は、2012年に国境を越えて移動した旅行者は10億3500万人で、1950年は2500万人から大きく増加していると紹介。その上で、2012年の総数のうち、アジアを訪れた外国人旅行者は全体の23%を占める2億3400万人となり、市場拡大の中心にあるのはアジアであるとし、この割合は2020年に30%まで拡大すると指摘した。

 リファイ氏は、アジアがデスティネーションとしてだけでなく旅行者を送り出すソースマーケットとしても重要性が増すと強調した上で、その背景を分析。「経済成長、中流階級が増えている、技術革新が進んでいる」といった要因もあるが、最も重要な点は「政府が観光業の重要性を深く理解している」こと、言い換えれば「グッドガバナンス」であるとした。

 一方、世界レベルで観光の成長の原動力となるアジアは、同時に応分の責任、義務が求められるという。リファイ氏は、「成長、経済力、責任、持続可能性はゼロサムゲームではない」と繰り返し強調。成長と持続可能性はトレードオフではなく、「更なる成長は、更なる責任を意味するべきだ」と言及。逆に義務の遂行において「リーダーシップ」を発揮することで、観光分野でのアジアの優位性が維持されるとも語った。

 なお、こうした論点に関連して、UNWTOの補助機関で「世界観光倫理憲章」の解釈や評価を担う組織「世界観光倫理委員会」の委員に、このほど元観光庁長官で首都大学東京教授の本保芳明氏が就任している。リファイ氏は、同委員会が「観光業が善を推進する業界になる責任を持っている」と語り、「日本がこのように貢献してくれることを嬉しく思う」とコメント。その上で「我々は、観光が人の人生を良くするということを示していかなければならない」と意欲を示した。