トップインタビュー:楽天トラベル代表取締役社長の山本考伸氏

  • 2013年9月5日

国内を力点に、“海外to海外”で勝負
旅行市場「まだまだ伸びる」

-日本の旅行業界の見通しについて、お考えをお聞かせください

山本 あくまで私見だが、まだまだ成長余力があると思っている。そのひとつの要素としては、SNSの浸透やデジタルカメラ、動画の発達がある。トリップアドバイザー在籍時も同じことを考えていたが、旅行は本来楽しいもの。それが共有されるプラットフォームが質・量ともに強くなってきたら、旅行の良さが伝わりやすくなり、旅行に行きたいと思う人が自然に増えていくはずだ。

 一方、旅行の素材は以前よりも安く、透明性を持って予約できるようになってきた。さらにサプライヤーのレベニューマネジメントが向上し、空いているキャパシティに誘導できる仕組みが構築されるようになれば、もっと予約増加につなげることも可能だろう。

 今後、旅行市場は大きくなると思うし、実際そうなっていると思う。特に何よりも明るい兆しと考えているのは、ここ最近の楽天トラベルの予約単価が前年同月比を上回っていること。特に海外に関しては同じデスティネーションとの比較でも、期間は長く、宿泊費は高額になっている。こうした傾向は是非今後も続いてほしい。

 旅行会社の成長は、オンラインだけではなく、リアルの店舗、電話も伸びる。リアルが主力でも増収増益の旅行会社はあるし、リアルだから今後の売上げが落ちるというものではないだろう。

 我々はウェブですべて解決できるとは思っていない。細かいところは電話で聞きたいというニーズもたくさんあるし、サイト開発側にとってもすべてをウェブで作りこむと効率が悪くなる。オンラインは他の分野よりも速いと思うが、結果的には消費者が望むところに良いサービスを提供できれば伸びていくのではないか。


-旅行業界の明るい未来のため、業界側からできることは

山本 一個人として旅行をしているが、例えば国内旅行をすると楽しいし、良質のサービスをリーズナブルな価格で受けられることに、改めて感動している。そうした旅行の経験を、旅行業界の方々にも積極的にいろいろなメディアで発信し、それを目にする機会を増やしてほしい。

 クチコミには「悪いことを言われるのではないか」というイメージがあるように思うが、平均してみれば旅行は楽しいはず。1つの悪いことの裏に8人の楽しい話がある。そこを閉ざすのではなく、悪いクチコミも隠す必要がないくらいの投稿をしてもらえるように誘導することが大切だ。お客様はマーケティングチャネルでもある。旅行の良さがよりオープンに投稿されるようになると、市場は自然に伸びていくと思う。

 もう一つ、自ら限界を作らずにビジネスの枠を広げていくことも大切だ。例えば日本のビジネスホテルは世界にも類を見ないホテル。世界的な大都市の東京で、駅から徒歩5分以内に6000円程度で清潔・安全な客室に宿泊できるのは、訪日旅行者にとって驚くべきことだろう。そう考えると、ターゲットはレジャー客にも広がる。名前に捉われずにマーケットを見て、裾野を広げているビジネスホテルもある。こういう例はほかにもあり、見方を変ればそれ以上の価値が出てくる可能性があると思っている。


-ありがとうございました