外務省、エジプト全土に「渡航延期勧告」-渡航情報引き上げ
外務省は7月6日、エジプト全土の渡航情報を「渡航の延期をお勧めします」に引き上げた。今まではスエズ湾、アカバ湾に面した沿岸地域を除くシナイ半島のみが渡航延期勧告の対象で、それ以外のエジプト全土は「渡航の是非を検討してください」だった。今回、デモ発生地域や衝突の規模の拡大、死傷者の増加、衝突の一部で銃器が用いられたことなどで、全国各地での治安の悪化や社会的混乱の拡大、継続が懸念されることから引き上げを決定した。
エジプトでは7月3日、国防大臣が憲法の一時停止とムルスィー大統領の退陣、最高裁判所長官が新大統領選出まで国政を司るなどのロードマップを宣言。4日には暫定大統領が就任し、ロードマップに沿った新移行政権樹立に向けた準備と、ムルスィー氏の支持基盤であるムスリム同胞団の幹部の拘束が実施された。
こうした動きを受け、全国各地でムルスィー氏反対派と、一連の動きを「民主的に選出された大統領の軍事クーデターによる追放」としたムルスィー氏支持派の間で死傷者を伴う対立が発生。5日には各地で支持派による大規模なデモ・集会が実施され、両派の衝突が一層激化し、一部では治安当局と民衆の間の衝突にも至っていることなどから、外務省では今後対立の激化による治安状況の不安定化が更に進むとの見通しだ。
同省では、エジプトの渡航や滞在を予定している場合は「どのような目的であれ渡航を延期されることをお勧めします」と呼びかけた。また、「真にやむを得ない理由」で渡航、滞在する場合は、不測の事態に巻き込まれないよう、在エジプト日本国大使館のウェブサイトや報道などで最新情報を入手するとともに、連絡手段を常時確保し、万が一の際の対応策を再点検して適切な安全対策が講じられるよう心がけてほしい、としている。さらに、デモや集会の発生により、治安当局の活動が制約されがちであることや、移行政府への反発の広まりから、テロなどを含む外国人を対象とした、または外国人が巻き添えとなる重大な犯罪が発生する可能性は排除できないとし、注意喚起を促した。