航空会社の付帯サービス運賃、米国旅行会社から批判の声-NSKセミナー

  • 2013年4月18日

フォーカスライト日本代表の牛場春夫氏  日本システム開発(NSK)はこのほど、東京都内で旅行会社のためのビジネスセミナー「航空会社の付帯サービス運賃導入による旅行会社への影響」を開催した。セミナーには米国の旅行流通コンサルティング会社「フォーカスライト」の日本代表で、航空経営研究所の副所長も務める牛場春夫氏が登壇し、世界の航空業界で導入が進む付帯サービス運賃の実態と、導入を急ぐ航空会社の狙いについて解説した。

 牛場氏によれば、世界の航空業界では2000年初頭から、インターネットを利用した直販志向を強め、各航空会社が自社独自の商品計画に基づくマーチャンダイジングを開始してGDS依存からの脱却をめざしているという。GDSに支払うブッキングフィーを圧縮し、販売主導権を確保することで、流通経費の削減につなげられるからだ。

 こうした意図のもと航空会社が考案したアイデアが、付帯サービス運賃だ。付帯サービス運賃とは、チェックイン手荷物や座席指定、機内飲料や機内食など、今まで運賃に組み込まれていたサービスを有料化し、基礎運賃と分けて設定するもの。牛場氏は、航空会社は付帯サービス運賃の導入で、運賃を細分化・複雑化し、わかりにくくすることで「オンライン・トラベル・エージェントの最低運賃検索能力を弱め、また航空会社のフルコンテンツを提供してワンストップショップとして機能してきたGDSから旅客を奪い取り、自社直販サイトへ誘導しようと試みている」という。

 牛場氏によると、付帯サービス運賃は新たな収入源として航空会社に欠かせないものになりつつあり、「LCC各社の財務諸表をみると、1人当たり運賃で付帯サービス運賃が占める割合は、ライアンエアーでは22.7%、エアアジアで17.3%、ウルトラ・ロー・コスト・キャリアとされるスピリット・エアラインなどでは実に42.5%に達している」のが実態だ。また、航空会社各社は新たな付帯サービス運賃の開発に注力しており、優先搭乗や各種機内サービス、手荷物などの有料化だけでなく、並び座席の中央に空席を確保するEmpty middle seatといった設定を考案する航空会社もあるという。

 しかし、付帯サービス運賃の導入が進む米国では、旅行会社から航空会社に対し、運賃の透明性の欠如や、旅客のプライバシー侵害に関する批判が出ており、業務渡航系旅行会社からは販売管理業務の複雑化を懸念する声も上がっている。さらに、GDS経由の販売の減少により、GDSインセンティブも減少することから、航空会社は旅行会社に対するコミッションをなくした上に、GDSインセンティブまで取り上げる気か、という批判も生まれていると説明した。

  なお、セミナーの第2部ではNSKが次世代旅行業総合システム「コントリップ(Contrip)」について製品の説明を実施。同システムはクラウドコンピューティング対応で、必要な機能だけを選択して導入できるといった特徴を備えている。3段階の開発ステージのうち現在はステージⅠまでの開発が完了。業務渡航系旅行会社やインハウスエージェント向けの機能を提供できる段階だという。