多様性の活用でグローバル時代を勝ち抜く-JATA経営フォーラム
▽多様な視点を得た個々の集まりが企業の力になる
では、旅行業界は何から取り組めばよいのか。
「結局は個人の考えにかかっている。企業は個の集合体でしかなく、多様な視点を得た個が集まることで企業は力を得る」とし、「そのための小さな第一歩として、個人個人が主体的な旅をして異文化や海外の人たちに触れることを提案したい」と語ったのは安藤氏だ。「特にトップの人たちには、有給休暇をとって旅に出てほしい。多様性の中に自ら飛び込むことをすすめたい」と、旅行業界に対しあえて旅をすることを提案、「旅育」の重要性を訴えた。
高岡氏は、前述のオールド・ボーイ・ネットワークに関連して「社内政治をやめよ」と語りつつ、「単に時期の問題ではないか」と楽観的な見方も示した。「日本は、食を見ても宗教を見ても寛容性がある。日本の企業は、企業内を働きやすい体制に最適化して成功してきたが、時代が変われば新しく最適化しないといけない。今は必要性を感じていないだけであって、世界規模で分業体制ができれば、世界規模での最適化の方向に動くのではないか」と推察する。
これに対し、厳しい見方をしたのは佐々木氏だ。「時期の問題であればいいが、多様性を求める人は、すでに自ら外に出てしまって、大企業やエスタブリッシュメントにはいないのではないか。高度成長時代の製造業にダイバーシティは不要だったかもしれないが、知識労働、ホワイトカラー、イノベーションの時代である今、ダイバーシティのない組織は圧倒的に弱い」と主張。
その上で、「役員会に女性と外国人どちらを入れるのが楽か。言葉や背景の文化などの違いを考えれば、明らかに女性。まずは女性を活用すべし」と語り、「女性ももっと手を挙げる必要がある」とマイノリティ自身への自覚も促しつつ、「経営者はトップダウンで今すぐ数値目標を設定すべき」と早期の対応を促した。
「過去の手法を踏襲するだけで企業が繁栄していた時代は終わった。グローバルな環境を無視して経営は成り立たない時代になっている」。110分に渡った議論は、五十嵐氏が意識変化の必要性を訴えて幕を閉じた。