2013年の市場展望とキーワード-12年の動向から読む、JTBFシンポより
懸念は中国・韓国との情勢不安と座席供給量
マインド低下に積極的な対策の必要あり
一方、13年の懸念材料もある。その一つが、日本と中国、韓国間の情勢不安による旅行意欲の低下だ。
12年夏、竹島・尖閣諸島をめぐる日本と韓国、中国の情勢不安が起こると、性年代別の出国率が変化。12年9月は、15歳から19歳、20歳から24歳、65歳から69歳の年齢層を除き、一気に前年を下回った。市場の先行き指標となる旅券発給数も、12年9月と10月はほとんどの世代で前年を下回っている。さらに、ドイツの調査会社が日本人を対象に実施した旅行意向調査でも、13年の旅行回数を「増やす」「前年並み」とする回答は昨年とほぼ同じ結果だが、「減らす」「しない」の回答では「しない」比率が上がったという。
黒須氏は内閣府の世論調査から、2012年の「中国・韓国に『親しみを感じる』人の割合」が、韓国は40%と韓流ブーム前の水準に、中国は20%以下にまで低下していることを指摘。「中国のイメージ悪は今に始まったことではない。過去に起こった問題からも回復しておらず、今回のことで悪化した。来年は半分戻ればよい方」ともいう。韓国についても「予想していたより厳しいというヒアリングもある」とし、「我々(旅行業界側)が行動を起こさないとマーケットは戻らない」と警鐘を鳴らす。
もう一つ、市場の成長が鈍化する懸念材料が、航空座席供給量だ。実は、黒須氏が市場予測根拠の一つとする旅行者数とGDPとの相関では、「13年は1920万人まで伸びてよかった」という。ただし、航空座席供給量は13年6月まで3.9%増で推移すると予測。「この後も増えるだろうが、今年ほど伸びない。年間で3.5%増」とし、さらに訪日旅行の回復で座席が逼迫するとみる。
なお、黒須氏は7月24日に開催されたJTBFの海外旅行動向シンポジウムで、2015年までの見通しとして3つのシナリオを発表。(1)最も好調な場合は年率5%増の成長で「早ければ14年上期に2000万人を超える」、(2)13年から座席供給量が横ばい状況となるが、羽田の再拡大でアウトバウンドが増加し「14年度中に2000万人を超える」、(3)12年が1850万人で、羽田再拡大まで供給量の余裕が保てず出国者数の伸びが失速した場合、「2000万人は15年以降」というもの。黒須氏によると現在時点の状況では、(2)と(3)の間で推移するとみている。