町の9割占める森を活用「森林セラピー」 鳥取県智頭町・メンタルヘルスセミナー

鳥取県智頭町(寺谷誠一郎町長)はこのほど、大阪市内で森林セラピー活用セミナーを開いた。就労者のメンタルヘルスケアの場として、同町への来訪・滞在をアピールするのが目的。関西の企業の産業医や保健スタッフら50人が参加した。


寺谷町長「皆さんに森をお貸しします」

町総面積の93%を森林が占める智頭町。林業のまちとして栄えたが、今は「苗を植えて50年経っても大根1本ぐらいの値段でしか売れない」(寺谷町長)。町を支えてきた産業が衰退し森の荒廃が懸念される中で、「森林セラピー」や「森のようちえん」といった森林を生かす取り組みを始めた。

 森林セラピーは、昨年夏にセラピー基地がグランドオープン。医学的に森林浴効果が実証された町内の森を体験するプログラムを提供し、ガイドの育成も定期的に行っている。ただ、森林セラピー基地は全国に50近くあり、智頭町の独自性を打ち出す必要があった。

 セミナーでは、メンタルヘルスケアの方策としての森林の効果についてパネルディスカッションが行われた。

 メンタルヘルスケアの必要性について、大阪産業大学人間環境学部で非常勤講師を務める姜永根さんは「うつ病を患う人は2009年で100万人以上と言われ、抑うつ状態はその5倍になります。さらに、慢性疲労を訴える人になると勤労者の半分です」。

 また、企業向け研修などを手がけるラシックの若山幸司社長は「精神的な疾患で休職あるいは生産性が落ちてしまっている人数はなかなか表に出てきません。1企業で1%だとしても、1万人いる大企業だと100人になります。企業側からすれば、この人たちにかかるコストは非常に大きい」。

 産業医の長井聡里さんは、そのためにも「医学的に森は必要」という。西洋医学では病名がつかない限り治療対象とならないが、現代の疾病はそれだけではないとも指摘する。だからこそ森の癒し効果を生かすべきだとし「森林は五感を鍛え、本能を生かす方に導いてくれます。森林セラピーでは、それに加えて、森林と共に暮らす人との交流があります」と参加者に勧めていた。

 寺谷町長は「智頭町の表札は『緑の風が吹く疎開のまち』です。年配の方には疎開とは何事だと怒られたりしましたけど、日本に一つぐらいストレスから逃げ出すまちがあってもいいじゃないですか。皆さんに森をお貸しします。どうぞ来てください」。


情報提供:トラベルニュース社