10月訪日は70.6万人-韓国の減少幅回復、東南アジアやロング方面好調
日本政府観光局(JNTO)発表(速報値)によると、2012年10月の訪日外客数は前年比14.7%増の70万6100人となった。10月は中国が尖閣問題の影響で減少幅を拡大した一方、韓国は減少幅を縮小。東南アジアや英国、アメリカ、オーストラリアなどの長距離方面も好調に推移した。10年比では2.9%減となり、9月の8.0%減から5.1ポイント回復したが、震災前水準には届かなかった。
方面別では、中国は11年比33.1%減、10年比33.2%減の7万1000人となった。10月は国慶節があったが、尖閣問題の影響で需要が減退。新規予約も鈍化した。9月は11年比9.8%増、10年比10.1%減の12万3500人だったことから、減少幅が更に拡大したことがわかる。
一方、韓国は11年比27.2%増、10年比13.2%減の16万8200人。円高や放射能汚染、竹島問題などのマイナス要因で減少が続いてきたが、9月の11年比19.0%増、10年比24.9%減の14万5700人と比較すると、減少幅は縮小。観光庁長官の井手憲文氏は、11月16日の会見で「10月は需要が少し上向きに転じてきており、明るいニュース」と更なる回復に期待を示した。今後は2013年の「日韓地方観光交流元年」の目標である交流人口700万人達成をめざし、韓国観光公社(KTO)らと協力し、震災前のレベルまで回復をはかる考えだ。
また、井手氏はプラス要因として、東南アジアの好調さをあげた。同地域ではタイ、マレーシア、ベトナム、インドが10月として過去最高値を記録しており、特にタイは3万1700人(11年比62.4%増、10年比14.0%増)と大きく増加した。観光庁では来年が「日・ASEAN交流40周年」であることから、13年度は東南アジアに力を入れて取り組んでいく方針で、概算要求でも重点要求枠で「東南アジア・訪日100万人プラン」を新設。今後は13年度に向け、ASEAN関連のイベントや現地からの招聘事業を増やすなど、追加的に施策を展開していく計画だ。
加えて、10月はアメリカが6万6600人(11年比13.6%増、10年比0.9%増)、英国が2万100人(11年比19.6%増、10年比8.6%増)、オーストラリアが1万7900人(11年比20.8%増、10年比7.4%増)と好調だった。とくにアメリカについては訪日市場で第4位のシェアを占めており、井手氏は「力を入れていく価値がある市場」と意気込みを述べた。
なお、1月から10月の訪日外客数累計は11年比38.0%増、10年比4.0%減の703万2800人。12年目標値の900万人を達成するためには、残り2ヶ月で196万7200人の訪日外客が必要だ。しかし、年間訪日外客数が過去最高の2010年で見ても、11月、12月の累計は128万3198人となっており、約68万4000人の差が生じている。井手氏も「達成は残念ながらかなり厳しい」との考えを示した。