井手長官、中国への訪日プロモ継続-尖閣は「中期的には大きな影響なし」
観光庁長官の井手憲文氏は9月27日の定例会見で、中国に対する訪日プロモーションを従来通り実施する方針を示した。井手氏は「どういう事案があろうとも、観光交流は大切。『観光は平和へのパスポート』が我々のポジションのベースにある」とし、「今まで実施してきたことを着実に、キャンセルすることなくプロモーションを続けていく」と述べた。
井手氏によると、中国からの訪日旅行は、尖閣諸島をめぐる日中関係の緊迫化などの影響は出ているが、「中期的にみれば大きな影響はないのでは」との見通し。日本政府観光局(JNTO)の在外公館経由で中国の旅行会社などからヒアリングしたところでは、訪日旅行のキャンセルや予約の鈍化が起こっており、国慶節の見通しも短期的で見ればあまりよくない状況だ。また、交流事業の取りやめ、クルーズの中止、中国路線の減便など「決して影響がないわけではない」という。
しかし、例えばクルーズについても旅行会社1社によるチャーター船が中止となったが、複数の旅行会社による定期的なクルーズは寄港しているところ。航空座席では一部団体がキャンセルになったものの、FIT層は比較的順調に推移しており、今後の予約も見越して従来通りキャンペーンを展開する考えだ。
また、中国側の動きを見ても、日本への旅行者や日本在住の中国人に注意喚起を促しているが、渡航情報は原発関連の問題で発出していた福島県以外には出されていない。井手氏は「悪い方ばかり見ていると心配になりすぎる」とし、「中期的、マクロで見れば大きな影響ではないと見ている」と述べた。
今後は上海で11月初旬に開催される日本消費品展覧会や、中旬の中国国際旅游交易会(CITM)2012など、現地で実施する展示会やイベントに予定通り参加し、訪日旅行をアピールする計画だ。広告出稿も当初の予定通り実施し、縮小はしない。
一方、韓国市場に対する竹島問題の影響については、従来から、放射能汚染や円高ウォン安の影響で全体的に落ち込んでおり、それが継続している。もともとの落ち込みから比較すると、竹島問題は「数字の上で見る限りでは大きな影響はないのでは」との考えだ。
観光庁では2012年の訪日旅行者数の目標を900万人に設定している。井手氏は「楽観的に考えるのは難しいが、残り3ヶ月を最後まで頑張っていきたい」と、目標を変更せずに取り組んでいく方針を示した。
今後は中国、韓国への取り組みに加え、今後も多種多様なイベントを実施していく計画だ。まずは10月の国際通貨基金(IMF)世界銀行年次総会2012の機会を捉え、さまざまな観光関連イベントを実施。11月にはインバウンド商談会として横浜で「Visit Japan Travel Mart」を開催する。さらに、地方と連携し、オールジャパンで訪日プロモーションを展開していく。