海外旅行の回復は20代女性が牽引、今後の座席増に期待-JTBFシンポジウム
上半期の出国者数が過去最高の894万1000人となるなど好調な推移を見せる海外旅行市場。通年の出国者数について公益財団法人日本交通公社(JTBF)主任研究員の黒須宏志氏は、さきごろの海外旅行動向シンポジウムで前年比8.9%増の1850万人から11.8%増の1900万人との予想を発表した。東日本大震災の直後にも関わらず需要の記録的な伸びをもたらしているものは何か。黒須氏の発表内容から、年代別出国率や消費マインド、航空座席などについて現状と今後の見通しをまとめる。
▽出国者数の増加、20代女性が牽引
出国者数は、11年7月から12年6月までの累計で1830万6000人となり、過去最高だった2000年9月から2001年8月までの1822万人を超えるペース。黒須氏によると、こうした増加を支えているのは20代の女性だ。
2011年の20代女性の出国率は26.6%で、2008年と比較すると4.2ポイント増加。過去最高であった90年代後半の32%に迫りつつある。リーマンショック後に円高ウォン安もあって韓国への若い女性の渡航者が増加したが、震災後は特に増えているといい、市場への寄与度も20代女性がトップとなっている。
2011年と2010年の年代別出国率を比較しても、20代女性は1.37ポイント増と大きく増加。加えて、女性だけでなく20代男性も0.57ポイント増と全体の平均を上回る伸びを示していることも注目に値する。
一方、海外旅行市場で大きな割合を占めるシニア層は、震災による心理的な旅行控えもあってか、震災後は出国者数が減少。11年7月以降はリピーターを中心に回復基調にあるものの、11年総計では60代以上の男性が前年比1.5%減、50代女性が1.8%減、60代女性が3.0%減と前年を下回る結果となった。
ただし、市場への寄与度では20代女性に次いで40代女性、60代女性が2位と3位になっており、依然として一定以上の存在感を示している。