ツーリズム産業が復興の主導に-危機時の取り組み、WTTCより
第12回世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)グローバルサミットは、昨年3月の東日本大震災を受け、当初の予定を変更し、被災地のひとつ、仙台で開幕した。この会場で開催されたセッション1では、「復興:日本、他国からの教訓」をテーマに、復興とその中でのツーリズム産業の役割が議論された。世界各地で起こる自然災害やリスクへの対応から今後に役立てられる事例が紹介された。
リスクに対する事前の備えを
2011年は東日本大震災に留まらず、世界各地で大きな自然災害に見舞われた1年だった。1月にはオーストラリアでの大洪水、2月はニュージーランドの大地震、そして東日本大震災。5月にはアイスランドでの火山噴火。6月にはチリの火山噴火で、多くの航空便が欠航した。大雨によるタイの大洪水も記憶に新しいところだ。
人々の移動が伴う観光、ツーリズム産業では、こうした自然災害の発生でビジネスに直接的な影響が及ぶ。特に、旅行会社、航空会社、ホテルなど宿泊施設は売上減少という影響が直後から現れる。災害をコントロールすることはできないものの、その災害リスクと向き合い、対応や危機管理のあり方によって、復興・回復に向けた歩みが異なると、世界各国から集まった出席者が異口同音に意見と共にした。
セッション1冒頭の基調講演で、観光庁長官の井手憲文氏は東日本大震災の経験を紹介。ツーリズム産業の課題として、特に4点を指摘した。第1に被災後は多言語での情報発信が難しいこと、第2にメディアが報じるのは被害の大きい特定地域の情報が多く、あたかも全ての地域が同様の状況と錯覚を与えるという弊害、第3に発生国が発信する情報は信頼されにくいこと、第4に交通の早期回復はツーリズムに限らず、経済の復興に向けた重要なインフラであるという意識が重要と強調する。
こうした課題への対応としては、リスクを意識した準備、正確な情報発信、中立な国際機関の情報発信が求められると、世界各国の出席者と共有した。特に、国際機関による情報発信は、ツーリズム関連では世界観光機構(UNWTO)、さらに今回の震災では原発事故による放射能汚染の問題もあったため、世界保健機構(WHO)が果たした役割は大きく、世界的な機関との連携が一定の成果を得られたという。