WTTC第12回会議が仙台で開幕-震災後の復興を議論

第12回WTTCグローバルサミット日本組織委員会副委員長の大塚陸毅氏 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)第12回グローバルサミットが2012年4月17日、仙台のウェスティンホテルを会場に開幕した。今回の開催は従来、東京のみで開催される予定であったが、2011年の東日本大震災を受けて、仙台を開催地に加えて内容を変更して開催されたもの。海外からの参加者は4月16日までに日本三景の松島、平泉に訪問。特に、松島では海に浮かぶ島々が津波を弱め、他の沿岸地域と比べ被害が少ない観光地であることも確認した。

 開会にあたり、第12回WTTCグローバルサミット日本組織委員会副委員長の大塚陸毅氏は、「予想以上に多くの海外からの参加者を集めることができ、感謝します。仙台は例年、この時期は桜が満開になりますが、今年は開花が遅れています。ただ、開花が遅れているのは桜の季節に再び、仙台に来て欲しいと願ってのこと」と挨拶。

 また、太平洋アジア観光協会(PATA)CEOのマーティン・クレイグ氏は、「仙台、東北でいかに通常通りに動いているかを確認することができた。これまでの東北の方々のご苦労をたたえたい」と語り、また「PATAは日本への訪問者数、観光客が通常の訪問者になることをこれからも支えていきたい」とかたった。

 なお、WTTCは18日は東京でさらにツーリズムに関する議論を進める予定だ。


▽東北観光推進機構、「復興ツーリズム」を推進へ

東北観光推進機構会長の高橋宏明氏 WTTC第12回グローバルサミットで東北観光推進機構の高橋宏明氏は出席者に対して、東北の観光復興に向けて協力を呼びかけた。高橋氏は「復興に向けて国から18兆円の予算、復興庁の創設など、復興に向けた本格的な動きに期待している」と、現状に感謝を表明したものの、取り組むべき課題が多いことも指摘した。

 高橋氏は、東北の海岸地域の津波被害が東北全体に及び、原子力発電所の事故では東北全体が汚染されたようなイメージがあると指摘。こうした事態を払拭するため、正確な情報発信に心がけたとし、英語、中国語、韓国語で現地情報を国内外に発信した例を紹介。さらに東アジアを中心に1年間に22回、スタッフを派遣して風評被害への対策として取り組んだことも説明した。

 しかし、現在でも観光復興の課題は「風評被害の払拭」であるといい、引き続き、日本政府観光局(JNTO)のウェブサイトで多言語で放射線量の数値を正確に伝える取り組みをしているという。

 さらに次の一手として、津波被害の地域を直接支援する「復興ツーリズム」に取り組み。これは被害の様子、被災地の人たちの生き方、防災プログラムの学習などをテーマにした旅行の促進で旅行会社と協力するもので、すでに団体や企業に向けて防災や危機管理などをテーマにした学習プログラムの一環として提案をしている。

 このほか、東北のツアーガイドを「語り部」として養成、子供たちの教育プログラムの一環として、防災学習を行うツアーなどが開催される予定だ。