消費動向の見極めとクロスチャネルの推進を-JATA経営フォーラム

  • 2012年2月20日

 日本旅行業協会(JATA)が2月16日に開催したJATA経営フォーラムで、「東日本大震災は日本のマーケットと経営に何をもたらしたか?」をテーマにパネルディスカッションを実施。財団法人日本交通公社(JTBF)会長の志賀典人氏をモデレーターに、旅行会社や消費者と直接接する機会の多いサービス関連企業の担当者が登壇し、震災後に変化した消費者動向と、それに対する営業戦略について話された。

 震災以降、消費者の価値観や世界観が変化したと志賀氏は言及。「消費者は好きなものは掘り下げ、それ以外は安くおさえるなど、選択の厳格化をおこなうようになった」と話し、例えば同じ額を消費しているからといって平均値ではかることができなくなっているという。リクルート執行役員カンパニー長の冨塚優氏も、じゃらんの国内旅行消費動向を例に挙げ、「平均1万5000円を消費していても、中身を見ると8000円と2万2000円を使う人に二極化している」と話す。消費者動向を考える際にはデータの平均値を見るのではなく、消費者の多様性やニーズを細かく把握し、それにあわせた提案や対策を講じることが今後は求められていくという。

 また、冨塚氏は今後さらにIT化が進むと話す。とくにスマートフォンの浸透でモバイルECが増えており、今後もスマートフォン向けコンテンツの充実が必要だという。さらに、最近じゃらんのクチコミ数が前年より減少していることにふれ、「普通のクチコミよりも実際に知っている人や友人の情報の方が信用できる」ことを理由に挙げる。これは、フェイスブック利用者が増加していることもあり、今後、旅行の提案などでも活用できることを紹介する。

 また、ジェイティービー(JTB)常務取締役でJTB西日本代表取締役社長の日比野健氏は、アメリカでウェブを通じた旅行申込みが7割に到達して以降、現在は5割程度に減少したことを説明し、「信頼できる人に相談したいということではないか」と話す。今後も店舗の存在意義はあるとし、パッケージツアーの商品価値向上と、五感に訴える店舗展開などを進めていくという。

 このほか、野村證券執行役員首都圏地区担当兼本店長の新井聡氏は、震災後、いざというときのための資金を確保する人が増えた一方で、「楽しむためにお金をつかいたい。楽しいことにつかいたい。という感覚も生まれた」と言及する。そうした人に対し、旅行を提案することもできるのではないかと話した。