新春トップインタビュー:OTOA会長 大畑貴彦氏
オペレーターと旅行会社の協働で商品造成を
OTOAスタンダードも引き続き模索
昨年は東日本大震災によって旅行業界も大きな影響を受けた。ツアーオペレーターも例外ではなく、2011年度前半は低迷したという。その後も、円高という追い風はあるものの、世界情勢は不安定で旅行を取り巻く環境の変化は激しい。日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)では、現地の施設やサービスの基準や目安となる「OTOAスタンダード」の確立を検討するなど新しい可能性の模索を始めている。旅行業界の専業分野であるツアーオペレーターは今後、どのような舵取りをしていくのか。2011年の振り返りとともに、OTOA会長の大畑貴彦氏に話を聞いた。(聞き手:弊誌編集長 松本裕一)
-2011年はツアーオペレーターにとってどのような年だったでしょうか
大畑貴彦氏(以下、敬称略) 3月11日の東日本大震災までは、ようやくリーマンショックの影響から脱却しかけ、一筋の光が見えてきたという印象だった。しかし、震災の発生で大きく状況は変化した。日本全体が自粛ムードで停滞するなか、旅行業も大きな影響を受けた。夏場にかけて海外旅行市場に若干の回復は見られたが、そのタイミングで欧州の金融危機、中東危機、タイの洪水などが起こってしまった。
海外旅行市場全体では需要が回復したようにいわれているが、ツアーオペレーターは地域に特化している会社が多く、問題が起きた地域の会員は大きなダメージを受けている。韓国や台湾など、日本人旅行者数が伸びているデスティネーションを手がけている会社は少ない。総合していうと、攻めには転じられず、守りの姿勢が強く、弱含みという印象だ。
-2012年の見通しはいかがでしょうか
大畑 円高が続いているが、景気にも影響があるため、必ずしも好材料だけではないと認識している。ロンドン五輪や韓国の麗水万博などのイベントは市場にとって刺激になるだろう。一方で、今年はロシア、韓国、台湾、米国など大国でリーダーが変わる可能性がある年で、世界経済が変化するかもしれない。2011年と比べれば、多少プラスになるのではないかと思うが、正直なところ予想は難しい。
しかし、結局は座席数なのだろうと思う。今年、インバウンド需要が戻ってきたとき、アウトバウンドの座席が確保できるかどうかが問題だ。その意味では、LCCの登場には期待をしている。LCCと旅行業界がどのようにリンクするかによって市場動向は大きく変わるのではないか。