12年度観光予算案、前年比2%増の103.4億円-震災復興・復旧枠設定
観光庁によると、2012年度の政府予算案で観光庁関係予算の総計は前年比2%増の103億3800万円となった。12年度は訪日需要喚起や観光による地域再生・活性化などの通常枠に加え、東日本大震災から「復旧・復興枠」を新たに設定し、3億3400万円を計上した。通常枠は1%減の100億400万円となった。
復旧・復興枠では、「災害時における訪日外国人旅行者に向けた情報提供のあり方に関する調査事業」として3000万円を計上。また、観光地域づくりプラットフォーム支援事業(被災地分)で5400万円、広域連携観光復興対策事業(東北観光博)で2億5000万円とした。東北観光博は東北地域全体を観光の博覧会場と見立て、各地の取り組みを連携させ統一的に情報発信するというもので、第3次補正予算案と合わせ、8億円を費やす。2012年1月に開始し段階的に進めていく考えで、実施期間は15ヶ月間とした。
一方、通常枠では訪日外国人3000万人プログラム第1期は4%減の82億9000万円、観光を核とした地域の再生・活性化は27%減の3億4300万円、観光人材の育成は観光中核人材育成事業として44%減の1億2400万円、ワークライフバランスの実現に資する休暇改革の推進は3%減の8000万円とそれぞれ減額した。一方、観光統計の整備は来年度から観光地域経済調査を本格的に実施することもあり、87%増の8億8700万円と大幅に増加。経常事務費などその他は6%増の2億8100万円だった。
訪日外国人3000万人プログラム第1期では、東北・北関東インバウンド再生緊急対策事業を新設し、6億2400万円を計上した。震災以降外国人旅行者数の落ち込みが激しい東北6県と茨城、群馬、栃木県の訪日需要の回復をはかる。海外主要市場で、商談会の実施や現地メディアの招請事業、専用ガイドブックの作成といった観光復興のピーアール活動などを展開する計画だ。
訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)は19%減の49億2700万円とし、緊急対策事業として風評被害対策を実施していく。また、MICEの誘致・開催をはかり、プロモーション活動も展開していく。そのほか、訪日外国人旅行者の受入環境整備事業は41%増の8億5400万円、日本政府観光局(JNTO)運営費交付金は4%減の18億8400万円となった。
観光を核とした地域の再生・活性化では、観光地域づくりプラットフォーム支援事業は9%減の2億4600万円、広域観光促進調査事業は56%減の8800万円を計上した。また、12年度からの新規取り組みとして、ユニバーサルツーリズム促進事業に900万円割り当てた。
ワークライフバランスの実現に資する休暇改革の推進では、地域における家族の時間づくり促進事業として64%減の3000万円を計上した。また、今年から第3次補正予算で実施している、企業に休暇取得と旅行促進を働きかける「ポジティブ・オフ」運動の関連事業として、国内旅行活性化のための観光整備事業で5000万円をあてた。
▽Fly to Japan!事業、実施かなわず-日中国交正常化40周年事業は外務省と共同で
予算の概算要求の際に盛り込み注目を集めた、全世界から1万人の外国人を日本に無料招待する「Fly to Japan!事業」は予算案に計上されなかった。観光庁によると、Fly to Japan!事業については、国の予算を個人の旅費にあてることが難しいという点から、関係各所の理解を得られなかったという。観光庁や日本政府観光局(JNTO)のウェブサイトで実施に至らなかった旨を告知し、在外公館などで問い合わせに対応する考えだ。
また、「日中国交正常化40周年に合わせた青少年招請事業」も計上を見送った。ただし、観光庁によると外務省の21世紀東アジア青少年大交流計画と協力して実施する方向で、現在外務省側と調整中とした。