市場ニーズの半歩先を行く-今、求められるビジット・デザイニング

  • 2012年1月18日

地域と連携することで生まれる
ビジット・デザイニングと旅行業の役割

コーディネーターとゲスト講師  具体的にワールド航空サービスでは、どんな取り組みをしたのだろうか。

 まず旅行者に本気で取り組むことを示すため、駐在員と添乗員を現地に派遣して徹底的に滞在をフォローした。事前に現地の店、レストランなど飲食店を調査し、馴染みになりやすそうな店をピックアップ。オリジナルマップや日本語メニューを作成した。特に日本語メニューについては「事前に旅行者に渡すことで、旅行者自身が欲求にあわせて店を選び行動できるように配慮した」(菊間氏)という。

 また、ビジット・デザイニングのためにインスブルグの町の良さを引き出すプラスアルファの魅力づくりを、観光局長になったつもりで行なった。例えば、素敵なカフェがあればフルートの生演奏を手配し、教会や広場で音楽イベントを実施するなど、現地を十二分に楽しめるようなコンテンツを企画した。さらにイベントを開放することで、現地の人々にとっても町の魅力の再発見と今回のツアーの認知につながり、協力体制が自然と生まれたという。

シンポジウムでは国内の先駆者がビデオ出演で事例を説明  駐在員・添乗員は携帯電話を持ち、旅行者の滞在のフォローをするのはもちろん、町で会えば声をかけ「心強い顔見知り」としてサポート。安心して自由に行動できるベースを提供することで、旅行者は想像以上にアクティブだったという。他にも旅行者に週に一度アンケートをとり、レストランのランキング情報を発表するなど、旅行者同士の情報交換の場も意図的に取り入れた。

 このような取り組みに対し、谷口氏は「ユーザーとサプライヤーが一緒につくりあげること、また情報のフィードバックから次の計画をするのは昨今の主流」と評価する。菊間氏は「ヨーロッパのFIT化をこのツアーで拍車をかけてはならない。旅行会社が介入することでできる価値をお客様に感じてもらうことが重要であり、単なる延泊ではだめだった」と振り返る。

 国内の事例では、水上温泉にアウトドアスポーツのキャニオニングを観光資源として定着させた、キャニオンズ代表のマイク・ハリス氏の例が参考になる。ビデオ出演でハリス・マイク氏は、地域との関係について「地域経済へのベネフィットもあるが、知的財産という側面での貢献が一番大きいと考えている。地元を巻き込むことでノウハウの共有化が進み、また我々の若いスタッフの存在自体が、水上温泉にエネルギーと新しい価値を創造した」と語る。