年間アクセスランキング、1位はピーチ、震災とLCCに高い注目
[総評] 今回は、2011年に掲載したすべての記事を対象にしたアクセスランキングです。本日までに掲載した約4400本の記事の中で最も多く読まれたのは、5月24日に掲載したピーチ・アビエーション(MM)の社名決定の記事でした。2位は、イタリア政府観光局(ENIT)などが原発事故で被災した母子を最長3ヶ月、イタリアに無料で招待した記事です。
東日本大震災が与えた影響は旅行業界にとっても個人にとっても甚大でしたから、関連する記事が1位になるのではないかと考えていましたが、「LCC」への注目はそれを上回ったようです。上位100位を見ても、LCC関連の記事は約40本もランクインしたのに対して、地震関連は約10本に留まっています。
震災関連の記事数には、13位に入ったデルタ航空(DL)とアメリカン航空(AA)の羽田線運休など間接的な記事は除きましたので、これらの数字の比較が重要な意味を持つとは限りません。しかし、上位100位の4割が1つの話題に関係する記事であるということ自体、過去の年間ランキングを見ても特異な傾向ですし、「LCC」というキーワードへの注目度が非常に高いということは間違いないでしょう。
2012年は、全日空(NH)系のMMとエアアジア・ジャパン、日本航空(JL)系のジェットスター・ジャパンの3社が運航開始を計画しており、先行するMMは3月、エアアジア・ジャパンは8月、ジェットスター・ジャパンは2012年内の就航予定です。
例えばジェットスター・ジャパンは最長5年で24機を運用する規模への拡大をめざしていますし、3社による日本市場の座席供給量の増加は相当なものになると予想されます。「座席と需要は鶏と卵」といわれますが、果たして需要がどのように推移するのか、旅行業界はどのように動くのか、強烈に興味を掻き立てられます。
2011年の海外旅行需要は、震災直後に落ち込みはあったものの早々に回復に転じ、通年の出国者数も前年を上回ることがほぼ確実になっています。円高や訪日外国人の減少に伴う販売可能な座席数の増加が要因とされていますが、大方の予想を裏切る結果であることは間違いないでしょう。
考えてみるとあのような大惨事が発生した3月11日から3ヶ月も経たないうちに掲載した、乱暴にいってしまえば航空会社の社名が決まっただけの記事が年間最多となるアクセスを集めたという事実は、旅への興味や意欲が底堅いものであるという意味で、その後の素早い回復の予兆であったといえるかもしれません。
財団法人日本交通公社(JTBF)は、2012年の出国者数を2011年の着地予想値から2.7%増となる1740万人と予測しました。今年1年間を振り返ると、1年を見通そうとする努力自体が無意味なことなのかもしれないと思ってしまうところもありますが、1740万人といえば2000年に記録した1780万人まであと一息という数字です。
日本旅行業協会(JATA)会長の金井耿氏は、来年を2000年の壁を打破する1年としたいと力強く語られていました。震災による自粛からの反動は一段落したとされており、円高も日本経済を疲弊させてしまえば悪影響に転じるわけですが、LCCによる座席供給量の拡大もありますし、ロンドンでのオリンピックとパラリンピック、韓国・麗水(ヨス)国際博覧会などイベントも予定されています。
聞くところによると外国系航空会社の新規参入もあるようですし、チャーター強化を鮮明にしている大手旅行会社もあります。おそらく、このまま何もなければ(これが最も重要、かつ難しいのかもしれませんが)、きっと出国者数は増加することが十分に期待できます。
もちろん、インターネットによる流通が拡大し直販化も進んだ今、出国者数の伸びに合わせて旅行会社が販売実績を伸ばし、利益を確保できるとは限りません。しかし、当欄でも何度も触れていますが、旅行会社で働く「人」、つまり皆様が「人」だからできること、コンピューターには実現できない仕事をすれば、それは間違いなく価値として評価を得られるはずです。
難しいことではなく、例えばお客様の立場に立って考える、熱意を持って提案する、優しく接する、仕事を楽しむ――こういったシンプルなことから十分に価値であるはずです。2011年の漢字は「絆」であったそうですが、「人」が提供する価値へのニーズは今後増していくのではないかと感じています。
個人的には、「人」だけができることの中で最も些細なことで、かつ最も喜ばれるものの一つは「笑顔」だと思っています。旅行は人を「笑顔」にするものですから、旅行を形づくりお届けする段階から「笑顔」でいたいものです。2012年が、皆様が「笑顔」で働ける素晴らしい1年となるよう心からお祈りしています。
日刊トラベルビジョンの年内の配信は月曜日の夕刊までですが、アクセスランキングと総評は今回が最後の更新です。本年も1年間、トラベルビジョンをご愛読いただきましてありがとうございました。来年も引き続きご愛顧を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。(松本)
※ランキングは次ページ以降に分割して掲載しています。
2ページ目が1位から50位、3ページ目が51位から100位までです。