12年の出国者数は1740万人を予測、11年もプラス成長へ-JTBF

  • 2011年12月19日

財団法人日本交通公社主任研究員の黒須宏志氏  財団法人日本交通公社(JTBF)主任研究員の黒須宏志氏は、2012年の海外旅行者数を2011年の着地予想値より2.7%増となる1740万人と予測した。2011年は前年比1.9%増の1695万人とプラス成長を見込む。東日本大震災を受けて、昨年の予測値1730万人を1625万人に下方修正していたが、昨今の需要動向を受け「強気の予想」と説明。12月中旬までの成田発の出国者数が、11月より5ポイント上回る堅調な推移で「12月は(2ケタ増となった)8月の伸び率に近づくのでは」というのがその理由だ。

 震災後の海外旅行市場について、黒須氏は「質の変化」を指摘。震災後のマインド変化として、リーマンショック後に顕在化してきた生活を見直そうとする傾向が、より強まったと話す。そのため、旅行も一過性の消費から自己の経験の蓄積となる営みを望む傾向に変化。「幸いなことに旅行は必要なものとして捉えられた」とし、それが今年の海外旅行市場では、ゴールデンウィークの駆け込み需要や夏休みの好調な推移、年末年始の需要増加に表れたという。

 一方、震災後の旅券発給数は10代、20代の若年層で増加しているものの、それ以外の世代は減少しており「発給数の減少が続く時は人数の伸びは続かない」と指摘。若年層が自己投資の一環として海外旅行に出かける傾向が増えたのに対し、シニアの出国率の低下に警鐘を鳴らす。また、震災後のGDPと海外旅行者数との相関図がイレギュラーな動きを示しており、「今年の第4四半期は円高と考え方の変化という、景気だけでない要素で動いている。市場を下支えしているのはビジネス需要だが、増加分はイレギュラーなレジャー需要の貢献」と説明。「経済活動と海外旅行はシンクロする。基本的に(この傾向は)長くは続かない」との見通しを示した。

 日本発着の航空座席についてはOAGのデータによると、2011年通年では2.2%増。2012年上期(4月~9月)は7.2%増。このうち、就航が決定しているLCCで1%から2%増加するという。ただし、2011年は震災の影響によるインバウンドの減少分を海外旅行に積み増しできていたが、2012年はインバウンドの回復にともない、インバウンドとの拮抗が出てくると話す。

 なお、訪日旅行者数は2011年の着地が27.4%減の625万人、2012年が26.5%増の790万人と予想。国内旅行は2012年は2%から3%増との予想を発表した。