現地レポート:タイ、洪水から復旧、現在の様子と観光業への影響

バンコク、アユタヤ「観光地は問題なし」、ツアー再開へ自信

アユタヤの主力観光素材も受け入れ再開

ビルマ軍が破壊したアユタヤの仏像。洪水時は遺跡の下の白い部分まで浸水したという

 今回の視察で注目が高かったのが、古都アユタヤだ。世界遺産の観光地を含む市街一帯が浸水し、腰から肩口まで水に浸りながら避難する市民の映像がメディアで放映されたとおり、観光分野での被害が大きかった場所だ。現在も、外務省の渡航情報は「渡航の是非を検討してください」となっている。催行再開の判断材料のひとつとすべく、視察に参加した旅行会社担当者もいた。

日本人街に掲示された1665年作のアユタヤの地図。水路が張り巡らされ、もともと水と生活の距離が近いことがうかがえる

 視察したのは、ワット・プラシーサンペット、ウィハーン・プラモンコンポピット、エレファント・キャンプだが、いずれも地面はしっかり乾き、観光に支障はない。ニュー東洋トラベルのツアーマネージャーである渡辺俊男氏によると、ワット・プラシーサンペットとともにアユタヤ三大遺跡に数えられる、ワット・マハタート、ワット・ヤイチャイモンコンやバンパイン宮殿、バンコク/アユタヤ間の片道クルーズなど、日本人のツアーに組み込まれる観光地やアトラクションは、観光可能となっている。

 一方、観光不可なのは、水上マーケットと遺跡群のライトアップ。水上マーケットは水は引いたが、資材が壊れたため再開できていない。ライトアップは来年の再開をめざして現在、調整中だ。ライトアップはアユタヤ滞在ツアーの最大の見ものであるだけに、復旧すればツアー再開の弾みになるだろう。

バンコクからアユタヤへの道中は、浸水した田んぼが広がる光景が目に入る

 市街地の道路沿いでは、壁に浸水の汚れが見られたところもあったが、概ねきれいに清掃されている。低い土地では浸水している家屋が見られたが、渡辺氏によると、もともとアユタヤは避暑と浸水防止のため、高床式の家屋が多く、小舟を所有する家も多い土地柄で、ほぼ毎年、規模は小さいが浸水は発生しているのだという。

 参加者は、「洪水の影響も観光ポイントも基本的に問題ない」(日本旅行業協会VWC2000万人推進室プロジェクトマネージャーの山口正氏)、「衛生面も気になっていたが、目に見えるほとんどの部分は清潔で臭いもない。日本に戻ったら再開可能と報告したい」(ANAセールス海外商品統括部アジアグループマネージャーの河野充司氏)とツアー再開に自信を示す。

アユタヤでの象ライド。象の上から遺跡を観賞できる楽しみも

 今回はホテルの視察ができなかったが、「アユタヤに滞在した他の視察グループの話を聞く限りでは、お客様にお叱りを受けるようなことはないと思う」(近畿日本ツーリスト海外旅行部課長の榎本武士氏)との印象。ANAセールスでは、12月28日にアユタヤ訪問ツアーの予約が入っているといい、同ツアーからの再開を決定している。