現地レポート:タイ、洪水から復旧、現在の様子と観光業への影響

バンコク、アユタヤ「観光地は問題なし」、ツアー再開へ自信

アユタヤのワット・プラシーサンペット。地面は乾き、緑も生える。従来と異なるのは観光客の少なさ

 バンコク、アユタヤの洪水は、タイの主力商品であるバンコクツアーの催行中止など大きな影響を及ぼした。大手旅行会社では、11月16日にバンコクの渡航情報が一部引き下げられたのにあわせて催行を再開した会社もあるが、アユタヤは「渡航の是非を検討してください」にとどまっている。また、消費者側でも「洪水があったところに今、行かなくてもいい」という理由でタイを選ばなかったり、振替を希望したりするケースがあるという。こうした状況の中、12月11日から14日まで実施された研修旅行では、洪水の傷跡を意識することは少なく通常通りの観光が可能であることを確認。参加者は「観光に問題はない」との感想を口々に述べていた。現在のバンコク、アユタヤの様子をレポートする。


バンコク、都心部の被害はなし
観光地、観光サービスともに正常化

暁の寺院は「渡航の是非を検討してください」の地域だが、問題なく観光できることを確認

 今回の視察は、タイ国政府観光庁(TAT)が企画した世界規模のメガFAMの一環として実施したもの。日本からは東京、大阪、福岡の日本事務所がそれぞれ研修旅行を実施しており、東京からのグループがバンコクで視察したのは、定番の王宮、エメラルド寺院、ワット・ポー、ワット・アルン(暁の寺院)、チャオプラヤー川ディナークルーズと、バンコク最大のマーケット、チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットだ。

エメラルド寺院の本堂。混雑しているが、本来はこの倍以上の観光客がいるという

 このうち、暁の寺院と、ドンムアン空港に近いチャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットは12月19日現在、外務省の渡航情報が「渡航の是非を検討してください」の地区内にあるが、いずれも通常の観光が可能だ。暁の寺院は一時的に浸水し、渡し舟も運休となったが、すでに再開。境内では排水ポンプが稼動していたほか、清掃がいき届いており、冠水の影響はまったくなかった。

 チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットも一帯が浸水したため閉鎖していたが、11月下旬から再開。訪問時はタイの3連休ということもあり、地元の人と観光客でスムースに歩くのがままならないほどの賑わいぶりだった。

チャオプラヤー川のディナークルーズ。王宮や暁の寺院のライトアップも通常通り

 バンコクの浸水は北部からはじまり南下していった。洪水時は市街の大規模な浸水の様子がテレビで放映されたが、研修旅行の現地オペレーションを担当したニュー東洋トラベルによると、被害が大きかったのはラープラオ通りまで。政府の対策が奏功し、都心部の市街や主要道路、ホテル、交通機関等にはほとんど影響がなかった。ラープラオ通りも現在は通行が可能だ。

浸水被害の大きかったラープラオ通りも水が引き、通行可能

 都心部でも万が一の浸水に備えるため、入り口脇に土嚢を積み上げているビルが見受けられたが、それが唯一見られた洪水の名残といえるだろう。バス車中から見た限り、市街地も多数の人や車の往来があり、通り沿いの市場や露店では買物や飲食をしながら知人との会話を弾ませる市民で賑わう。バンコク名物の渋滞も従来通りで、都心部では通常の日常生活が営まれているようだ。

なお、バンコクの一部の渡航情報が11月16日付で「十分注意してください」に引き下げられたのを受け、複数の旅行会社ではバンコクのツアーを再開している。